大阪ダブル選で「維新」が掲げた「大阪都構想」への再挑戦
自民党と維新との関係を考える上で、興味深かったのは、大阪府知事と大阪市長の2015年のダブル選である。
大阪で「与党」の維新に、自民が挑戦した構図だが、「現代自民」と「伝統自民」の戦いだったように見えた。この年のダブル選は、松井知事と橋下市長の任期満了に伴う選挙で、維新は知事選で松井氏、市長選では政界引退を表明した橋下氏の後継として維新の党衆院議員の吉村洋文氏を擁立した。松井、吉村両氏は、同年5月の住民投票で廃案になった「大阪都構想」への再挑戦を掲げた。
「都構想」に対抗して掲げた「自民」の「近畿メガリージョン構想」
一方、知事選、市長選でいずれも新顔を立てた自民側が「都構想」に対抗して掲げたのは、「近畿メガリージョン構想」だった。大阪から北陸などを新幹線でつなぎ、近畿を首都圏に匹敵する都市圏に発展させるという構想だ。同年11月22日投開票のダブル選を前に、竹本直一自民党大阪府連会長は、所属する自民党岸田派の会合でこう呼びかけた。
「大阪は東京に次ぐ第2の都市とは言うが、人口1人当たりの所得は全国で14位まで下がっている。滋賀県よりもはるかに下、おそらく富山県より下がっている。橋下徹さんが知事になったのが8年前。この時は、まだ5位。何でこんなに下がったのか。『都構想』という一つの考え方に対して、ボクシングばかりやっているから、やるべき経済対策に手が打てていなかった」
「自民党の候補は、大阪の経済の浮揚を目指して『近畿メガリージョン』という近畿の交通ネットワークを完成させて、東京と並ぶ高速鉄道網の整備を図ることを念頭に置きながら、関西の復権を図る経済対策中心に訴えていく」
「関西に元気がなければ東京一極集中はますます進む。是正する意味でも、リニアを早く大阪まで持って行くことも含め、『国土構造の均衡ある発展』を図るために、どうしても必要だ」
「国土」「均衡ある発展」。こうした言葉を聞き、ある年代以上の国民が頭に思い浮かべるのは田中角栄元首相だろう。田中氏は、全国に高速鉄道や高速道路を張りめぐらせることで、「国土の均衡ある発展」を訴えたからだ。ダブル選に出馬した自民候補を全面的に応援した自民党幹部が、二階俊博総務会長だったことも、田中氏を思い起こさせる。田中氏を師事する二階氏は、移動中の車中で田中氏の演説を聴いていると、番記者に明かしたことがあるほどだ。