天然ガスに頼っていたところにウクライナ危機が勃発
それに対して、電力供給はかなり不安定だ。脱炭素に対応するために、石炭などを用いた火力発電が減少した。ドイツは脱原発も進め、洋上風力など再生可能エネルギー由来の電力供給を増やした。しかし、昨年、欧州では風況が変化し、洋上風力を用いた電力供給が減少した。供給減少を埋め合わせるために欧州各国は天然ガスを用いた火力発電を強化しようとした。
その状況下、ウクライナ危機が発生した。世界全体で天然ガスなどエネルギー資源の需給は逼迫している。脱炭素のために世界各国の主要な金融機関は石炭など化石燃料関連プロジェクト向けの融資を減らした。米国やオーストラリアでは石炭の不足や火力発電所の老朽化も重なり、電力不足懸念が高まっている。
中国ではゼロコロナ政策による物流停滞、オーストラリアとの関係悪化などによって石炭が減少し、電力供給体制が不安定だ。世界各国で電力の需給は急速にタイト化している。
日本では「早すぎる梅雨明け」で水も大ピンチ
気候変動の深刻化によって水も不足している。6月27日に九州南部、東海、関東甲信地方が梅雨明けした。1951年の統計開始以来、関東甲信は最速、九州南部と東海は2番目の早さだ。降水量が少なかったこともあり、各地でダムの水位が低下している。それに加えて、愛知県豊田市ではインフラ老朽化によって、明治用水頭首工で大規模漏水が発生し経済活動に懸念が高まった。
産業別にみると、最も大きな支障が懸念される一つが半導体だ。半導体の生産プロセスでは、“超純水”と呼ばれる極端に純度の高い大量の水を消費する。世界最大のファウンドリである台湾積体電路製造(TSMC)は、1日に最大20万トンの水を消費するといわれる。昨年、台湾では旱魃によって水不足が深刻化し、需要が増加する最先端のチップ生産を続けるためにTSMCは給水車を手配して水の確保に奔走した。それによってTSMCの生産ラインが停滞に追い込まれる事態は避けられた。