電力不足+水不足のWパンチが世界を襲う

最近、世界的に電力と水の不足が深刻になっている。わたしたちの日常生活や企業の生産活動に欠かせない、社会の基礎的なインフラというべき電力と水の不足は、見過ごすことのできない重要な問題だ。この背景には、世界的な異常気象などの自然要因に加えて、ウクライナ危機によるエネルギー資源の高騰など人為的な要素が重なっていることがある。

6月としては観測史上初めて3日連続の猛暑日を記録した東京都心を行き交う人たち。関東甲信地方で統計開始以来、最も早い梅雨明けが発表された=2022年6月27日午後、東京・銀座
写真=時事通信フォト
6月としては観測史上初めて3日連続の猛暑日を記録した東京都心を行き交う人たち。関東甲信地方で統計開始以来、最も早い梅雨明けが発表された=2022年6月27日午後、東京・銀座

今後、短期間で電力と水の不足の問題を解消することは難しい。いずれも長期化することが懸念される。特に、電力面に関して、原油や天然ガスさらには石炭などの価格高騰などが深刻だ。ロシアのウクライナ侵攻によって、ロシアからのエネルギー資源の供給に重大な問題が発生している。世界各国がエネルギー資源を奪い合わざるを得ない状況になっている。

わが国などで原子力発電所の再稼働も容易ではない。また、気候変動による降雨の減少などによって、水力発電を従来通りのペースで安定して行うことも難しくなっている。電力不足と水不足が掛け合わさることによって、世界全体で供給のボトルネック(制約)は深刻化するだろう。半導体をはじめとする電子部品や自動車、食糧生産や物流など広範な経済活動に負の影響が懸念される。

コロナ禍のテレワーク需要に猛暑が重なり…

世界各国で、電力の供給が需要に追いついていない。基本的に、世界経済の成長によって各国の電力需要は増える。GDP成長率が相対的に高い新興国では、経済成長が電力需要を押し上げる。直接投資の増加による生産活動の活発化、インフラ整備などがある。そうした需要の拡大に、供給サイドが追いついていない。当然、電力は不足がちになる。

コロナ禍の影響も大きい。感染の発生直後、世界各国でテレワークが増え家計の電力消費は増えた。その一方、感染再拡大が深刻な状況下では動線が寸断された。それによって企業部門の電力需要は抑えられた。その後、中国を除く世界各国はウィズコロナの時代に入り、人々の動線が修復されサービス業や生産活動が正常化している。テレワークを続ける人も多い。それによって電力需要は増える。

また、夏場の急激な気温上昇の影響も大きい。6月25日から9日連続で東京都は猛暑日を記録した。その結果、冷房のための電力需要が急増し、東京電力が“電力需給ひっ迫注意報”を出した。各国で電力需要が想定以上のペースで増加している。