より多くの実入りがあるようにと、最近は長時間勤務のシフトを増やしているという。ガソリン代を大きく減らせないなら、1通勤あたりの稼ぎを上げようという戦略だ。体力的にはつらい長時間労働だが、なりふり構っていられない。

好きだったソフトボールの練習は、グラウンドまで1時間ほど車を飛ばさなければならないことから、最近は諦めた。「いつ出かけようか思い悩むようになりました」とアドボケート紙の取材に答えている。

アメリカ全土で「ガソリン窃盗団」が横行

クルマ社会のアメリカにおいて、ガソリン価格の高騰は切実な問題だ。全米自動車協会によると、レギュラーガソリンの価格は、最高値のカリフォルニア州では1ガロンあたり6.244ドル(7月3日時点)。これは日本円に換算すると、1リットルあたり221円になる。

なお昨年6月の平均価格は1ガロン約3ドル、1リットルあたり107円だった。日常的に長距離を移動するアメリカにおいて、こうしたガソリン価格の高騰は切実な問題だ。

燃料高騰を受け、ガソリンは「盗む価値のあるもの」とみなされるようになった。米CNNは、全国で大掛かりなガソリンの窃盗が相次いでいると報じている。一度に大量のガソリンを抜き取り、ブラックマーケットで販売しているという。

11月下旬の深夜、霧のかかった人けのないガソリンスタンド
写真=iStock.com/Willowpix
※写真はイメージです

東はバージニア州から西はネバダ州に至るまで全国的に、給油ポンプから不正にガソリンを排出させる機器を利用し、ガソリンを盗む手口が横行している。ネバダ州ラスベガスの例では「高度に改造された車両」が投入され、数千ドル相当のガソリンが抜き取られた。窃盗団はその後逮捕されている。

食品価格は過去43年で最大の上昇率

燃料だけでなく、日々口にする食品もかつてないほどの値上がりをみせている。米労働省・労働統計局の発表によると、5月の消費者物価指数が前年比で8.6%上昇した。なかでも食品価格は12%の上昇となり、これは過去43年で最大の上げ幅となった。

デトロイト最大の地方紙「デトロイト・フリー・プレス」は、育ち盛りの子供たちに満足な食事を与えようと、自ら食べる量を切り詰める親を紹介した。

毎日の料理に欠かせない卵は、1年間で32%という高い上げ幅を記録した。10個入りのパックを買えていたお金で、いまでは7個までしか買えない計算だ。消えた3個を貯蓄で補えない家庭では、両親が空腹に甘んじるなどして子供の食事を捻出している。

ベーコンや牛肉なども軒並み13%以上の価格上昇となっており、もはや高い商品だけを避けて節約するという方法も通用しなくなってきている状況だ。