【ひろ】あとは進化史について書かれたニック・レーンの『生命、エネルギー、進化』ですね。多くの子供は「命ってどうやって生まれたの」って聞いてきますが、この本によると、今のところ「海底のアルカリ性の温泉が湧くところで生まれたんじゃね?」という説が強いらしいです。ってことで、僕が面白いと思う本は、10年以上たっても知識が古くならないようなものが多いです。

実業家と本は、スタジオ撮影
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本に書いてあることに自分なりの解釈を少し加える

【成毛】で、その内容をドヤ顔で受け売りすればいいんですよ。ただ、自分から「この本の中身はこうでしたよ」とは話さない。概要にひと言つけ加えるくらいです。僕が言っている受け売りは、本に書いてあることをなんとなく解釈して、その話を自分が思いついたように話すということ。だから“引用”じゃなくて“受け売り”なんです。話しているときは「僕が思いついたんだ」くらいの勢いになっていると思いますよ。

【ひろ】あはは(笑)。でも、本をいっぱい読んでいると、なんの本から得た知識なのかわからなくなったり、引用元がこんがらがることはありますよね。んで、次第に自分が思いついたんじゃないかと勘違いすることもある。

【成毛】そうそう。それに本の受け売りをしていると、ときどき自分の思いつきが加わることもありますからね。だから、それを続けているとなんとなく賢そうに見えるというのが僕の戦略です。

【ひろ】ちなみに、成毛さんは著者としてもたくさん本を出していますけど、自分の本の内容が受け売りされることは意識していますか?

【成毛】僕の書いている本は、ひと言でいえば「面白ければいい」んです。人に何かをちゃんと伝えるつもりはありません。例えば科学史がテーマなら、科学史という落語を読んでいるような感覚になってくれればいいんです。実は今、科学史をテーマにした本を執筆しているんです。でも、「○世紀に××が発見されました」というつまらない年代記にはしたくない。そういうのは、めちゃくちゃつまらないじゃないですか。

「ためになるか」よりも「面白いかどうか」

【ひろ】僕もオススメ本の条件に「読んでいて面白い」を入れていますけど、これって大事っすよね。

【成毛】そう。僕もめちゃめちゃ本を読んできましたが、結局、面白いから読んできただけなんですよ。トッドもハンチントンも「ためになるから」なんて思っていない。だから、読んでいてわからなくなったらウィキペディアを開いて「あ、エマニュエル・トッドは、あの本の中でこういうことを言ってたんだ」って確認していますから(笑)。で、それを次の日に居酒屋さんに行ったりして、いろんな人に話すわけです。で、10回くらい話すとだんだん精緻化してきて、自分が考えたような話になってくるんですよ。

【ひろ】なるほど。じゃあ、読者の人はその成毛さんの本を読めば受け売りできるし、仲間内で賢いキャラにもなれるでしょうね。

【成毛】そうかもしれませんね(笑)。