定期預金は自分のお金、ローンは外から入ってくるお金という錯覚

定期預金は「自分のお金」という勘定であるため、それを崩すことに抵抗感があるのに対して、自動車ローンはどこからか入ってくるお金という感覚になってしまうからです。もちろんそれは返さないといけないことはわかっていますが、その場合でも月々の返済は数万円ですから、それほど大きな金額という印象にはなりません。自分のお金である定期預金を一度になくす方が心理的抵抗感は大きいのでしょう。でも自分のお金をトータルで考えれば、そんな高い金利を払って買うよりもわずかな金利を放棄する方がはるかに得なはずです。

同じようにメンタル・アカウンティングの影響を受けがちなのが、民間の保険会社が提供する医療保険です。多くの人が勘違いしていますが、民間の医療保険は治療費をまかなうためのものではありません。治療費がまかなわれるのは、公的な医療保険、例えば会社の健保組合で加入している健康保険などから支払われるのです。

では民間の医療保険は何のためにあるかというと、治療や入院等に伴う費用のうち、公的医療保険でカバーされないもの、具体的に言うと入院中の食事代や個室に移る場合の差額ベッド料、そして病院に通うためのタクシー代といったもので、これらは公的医療保険では支払われませんから、それをまかなうために“お金が支給される”のが民間の医療保険なのです。

通院のための費用は貯蓄から出してもいい

でもよく考えてみると、それらの費用は貯金から充てることもできます。貯金ゼロの人ならともかく、ある程度の蓄えがあるならそこから出せば良いはずです。ところがこれも先ほどの自動車ローンと同様で自分の貯金から出すと、自分のお金が減ってしまうという感覚になってしまうのです。その証拠に「貯金はおろす」と表現しますが、「保険はおりる」と言われますね。これならどこからかお金が降ってくるみたいなイメージです。でも実際は自分が払い込んだ保険料の中から支払われているのです。

であるなら、医療保険の保険料を払う代わりにそのお金を貯金していても良いはずです。貯金の良いところは貯めておきさえすれば、使い道は後から自由に決められることだからです。自動車ローンを利用するにしても民間の医療保険に加入するにしてもトータルで考えてどうするのが自分にとって一番得かを考えることが必要です。

通帳を見ながら、生活費について話し合う夫婦
写真=iStock.com/takasuu
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他にも冒頭の例でお話したように、自分で一生懸命働いて稼いだお金は使うことに慎重なのに、ギャンブルや臨時収入で入ってきたお金はパッと使ってしまうという傾向があるのでメンタル・アカウンティングに陥らないように注意することが必要です。