人が商品やサービスを買うまでの意思決定を分解すると、次のようなステップになります。

①理想 自社や自分の理想の状態を思い浮かべる
②課題 理想と現状の差を認識する
③価値 課題を解決するために、商品・サービスによって実現しなければならない効果を認識する
④方法 その価値を生み出すため、最適な方法として「買う」ことを選択する

モノではなく、ストーリー(物語)で売り込む

マーケティングの世界には「ドリルと穴」という考え方があります。

顧客はドリルそのもの(方法)を買いたいのではなく、ドリルを使って開けた穴(価値)を買いたいのだ、という考え方です。それも、顧客は突然、壁に穴を開けたくなるわけではありません。

「こんな家を造りたいと思い浮かべる」(理想)
「壁にラックを立てたいが、ラックをはめる穴がないと気付く」(課題)
「壁に穴を開ける道具が必要だと気付く」(価値)
「穴を開けるためにドリルを買いたいと思う」(方法)

この流れに合致した際、初めてドリルを買うのです。

これからの時代に求められる営業とは、「このドリルはこんなに性能がいいんですよ」と売り込む「プロダクト営業」ではなく、「どんなことにお困りですか?」と聞く「ソリューション営業」でもありません。

顧客と共に理想の家を描き、そこに必要な穴を見つけ、最適なドリルを提示するような営業です。「理想→課題→価値→方法」のストーリー(物語)を顧客と一緒に組み立てられる営業を、「ストーリー営業」と呼びます。

古い営業を「ストーリー営業」に変える4ステップ

「プロダクト営業」や「ソリューション営業」。これらを、「ストーリー営業」へ進化させる具体的な方法を紹介していきます。

STEP①「価値」を明確にして「プロダクト営業」を進化させる

「プロダクト営業」を進化させるなら、商品・サービスの機能や性能だけでなく、それらを通じて顧客が得られる「価値」が何なのかを伝えなくてはいけません。

例えば、食品メーカーで新商品を発表した場合、その食材や成分だけでなく、「食べ応えがあるがダイエットにも効果的」といった「価値」を伝える必要があります。生命保険会社なら、保険料や保障内容だけでなく、「家族が安心して暮らせる」といった「価値」を伝えなくてはなりません。IT企業がITシステムを提案するなら、その機能や性能ばかりではなく、「社内の業務が効率化される」といった「価値」を提示する必要があります。

企業が提供する商品やサービスの紹介資料でも、機能や性能に加えて、その「価値」についても言及する必要があります。営業担当者は、こうした情報をしっかりとインプットして、「プロダクト営業」を、その「価値」まで伝える「ストーリー営業」へと進化させていきましょう。