「でたらめでも押し切る」トランプとプーチン

わたしなりに交渉論として分析すると、彼の失敗は、〈利益〉の設定が間違っていたのが原因といえるでしょう。

彼はアメリカの〈利益〉を唱えながらも、本当の〈利益〉は「自分が大統領として再任される」という利己的なものだったのです。

加えて、虚偽の情報にでたらめな〈根拠〉を重ね、それを何度も〈コミュニケーション〉したことが、本質的な誤り(暴徒化した支持者による議事堂への乱入)につながったと見ています。

齋藤孝・射手矢好雄『BATNA 交渉のプロだけが知っている「奥の手」の作り方』(プレジデント社)
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ちなみにこの「でたらめでも〈根拠〉をいう」という方法はまさに、トランプ氏が好んだものです。

事実と違っていても〈根拠〉を示せば、人は互恵関係を築くために、他人が正当と主張している要求に応えようとする心理があるのです。

ウクライナに軍事侵攻したロシアのウラジーミル・プーチン大統領も、ロシア国内向けのプロパガンダとして使っている手法といえるでしょう。

ビジネスマン時代のエピソードを読むと、トランプ氏は目の前の交渉をうまく進めることに関しては天才的だったかもしれませんが、大統領としての評価が高くないのは、国益よりも自分の〈利益〉を追求してしまったことに尽きるのでしょう。

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