ふだんから女性ホルモンの値を知っておく

たとえば、一回の採血でエストロゲンの数値を調べても、それが上り坂のてっぺんなのか、下り坂の途中なのかはわかりません。その年齢の平均値よりも高かったとしても、下り坂の途中なのであれば更年期障害の症状が出る可能性があるわけです。時間をおいて定期的に測り、今までよりどれだけ下がったか、その下がり方を把握しなければ診断できないのです。

このため、更年期障害に似た症状があっても、数カ月後にもう一度採血して検査することになるので、診断が遅れ、その分治療も遅れてしまいます。ですから、ふだんから自分の数値を知っておくとよいでしょう。健康診断のオプションで選べることもあるので、30歳を過ぎたら、女性ホルモンの値を調べておくとよいと思います。

更年期障害の治療は、まず「日常生活でどこまで困っているか」がポイントになります。日常生活に支障が出るほど症状があるなら、エストロゲンを補充する、ホルモン補充療法も選択肢の一つですが、そこまで支障がなければ、できるだけ女性ホルモンが下がるスピードをゆっくりにしていく対策をしていきます。

女性ホルモンの低下をゆっくりにするには、まず食事、運動、睡眠といった生活習慣を整えていきます。食事では、女性ホルモンとよく似た働きをするイソフラボンを多く含む大豆製品をなるべく多くとるようにします。たとえば豆腐や納豆、大豆もやしといった食材です。

バランスも大事なので、タンパク質やビタミン、ミネラル、カルシウムもしっかりと意識してとりましょう。特に40代以降はビタミンB群やEが不足しがちなので、サプリメントで補ってもよいでしょう。

血液の巡りをよくしておくことも大切です。おふろはシャワーで済まさず、湯舟に入って、しっかりと体を温めます。半身浴もいいでしょう。たばこを吸っている人には、禁煙をおすすめします。たばこを吸うと血管が細くなり、血流が滞りやすくなります。

女性に多い甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症も、うつ病に間違われることの多い病気です。更年期障害は30代後半から症状が出ることが多いですが、こちらは20代からあらわれる女性に多い疾患です。あまり耳慣れないかもしれませんが、それほど珍しい疾患ではありません。

甲状腺機能低下症とは、新陳代謝を活発にし、体を動かすエネルギーとなる甲状腺ホルモンの分泌が減ってしまう疾患です。免疫が正常に働かなくなり、自分の体の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種で、予防は難しいとされていますが、甲状腺ホルモンを補う薬で治療が可能です。

ひどい倦怠感があったり、動きがゆっくりになったり、記憶力が低下したりと、うつ病とよく似た症状が出ます。ただこれは、血液検査をして甲状腺ホルモンの数値を見ればわかるので、多くの精神科では、うつ病の疑いがある人については、まず採血して甲状腺ホルモンの値を確認し、甲状腺機能低下症の疑いがあれば内科の受診をお勧めします。

採血のため、女性患者の腕に止血バンドを装着する熟練した若い医療従事者
写真=iStock.com/Svitlana Hulko
※写真はイメージです