出世頭のエリートほど思考停止に陥りやすい

今の日本の主要な舞台で活躍している人たち、特に順調に出世街道を歩いている、もしくは歩いてきたような組織人たちは総じて、まじめで勤勉であればあるほど、上司が言っていること、先輩が言っていることがそのまま規範になり、どうさばくかしか考えない思考停止に陥っているのです。

日本人は、勤勉で粘り強く、結束力は世界一でありながらも、こうした「思考停止」に陥りやすいという“特異性”を持っています。それは、「運命として与えられた規範を耐え忍ぶ姿勢」にどこか親近感を持ち、それを率先垂範することを美徳とする、という一種の「勤勉美学」が組織の中に息づいている、ということでもあります。

柴田昌治『日本的「勤勉」のワナ』(朝日新書)
柴田昌治『日本的「勤勉」のワナ』(朝日新書)

だからこそ、組織人としての規範から外れる行動を選ぶことは、日本人にとってハードルの高い課題になってしまうのです。傍観者としてなら、評論めいた批判を口にしやすいのですが、いざ自分が同じ立場になったとき、まわりを取り巻く環境のことなどを踏まえつつ、何ができるのか。自分のすることにどういう意味が生じるのか。

大切なのは、そういう状況に置かれたとき、自分も何も考えずに規範にただ沿ってしまうという思考停止に陥りがちである、という自覚をまずは持つことです。

「思考停止」とはどういうことなのか。自分、および自分のまわりでどのような影響、意味を持っているものなのか。それを本書で一緒に考えていきたいと思います。

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