全国18カ所にゴルフ場を展開する太平洋クラブは、2012年に経営破綻。その後、スポンサーとなった遊技業界大手のマルハンによって「名門ゴルフ場」として復活した。韓俊社長は何をやったのか。『名門再生 太平洋クラブ物語』(プレジデント社)を出すノンフィクション作家の野地秩嘉さんが書く――。(第2回/全4回)
太平洋クラブのゴルフ場
提供=太平洋クラブ
太平洋クラブ御殿場コース18番ホール

経営破綻→18コースすべての黒字化に成功

太平洋クラブは一度破綻している。パチンコ業界トップのマルハンからやってきた社長、韓俊(ハン シュン)は倒産して気落ちしていた従業員を元気づけ、力を引き出し、翌年には利益を出し、数年で同社を再生させた。そして、地に落ちた太平洋クラブという名門ブランドの価値を向上させている。

「ゴルフのことなど何もわからないくせに」と陰口をたたかれながらも、韓俊は同社のすべてのコース(18カ所)を黒字化した。

4回の連載記事は業界の外から来たアウトサイダーがゴルフ業界の慣習を打ち破り、倒産した会社と働く人間を再生させた大人の物語である。

再生の決め手は「マルハン流」だった

2014年、遊技業界最大手のマルハンは破綻したゴルフ場グループ、太平洋クラブを買収した。マルハン創業者の三男で、経営トップに就いた韓俊は18のコースを整備し、キャディサービスの質を上げ、料理を改善した。従業員の給与を上げ、やる気を引き出した。

同クラブでは、キャディを転勤させるといったゴルフ業界では考えられなかったチャレンジも行っている。

韓俊はこう言っている。

「お客さまが喜ぶ、得をすることを考えるのが施設型エンターテイメントのサービスです」

つまり、パチンコ・スロット店でもゴルフ場でも、客が喜ぶこと、得をすることをすればいいということだ。

太平洋クラブでは従業員に教育研修を行ったのだが、それは韓俊がマルハン全体の営業責任者を務めていた時、採用したものと同じだった。

マルハンでは「マルハンイズム」と言い、太平洋クラブでは「太平洋クラブイズム」である。どちらの社内でも略して「イズム」と呼んでいる。