90年代の後半からマルハンは次々と出店していく。1995年の同社店舗数は37店、売り上げは1440億円。27年たった現在、店舗数は314で売り上げは1兆2000億円と約10倍になっている。
マルハンを改革し、大きく飛躍させた時期、俊は司令塔のひとりであり、また、最前線にも立っていた。その時、経験したことは太平洋クラブの再建でも役立ったのである。
まずはサービスをしたい人を採用すること
俊は店舗を増やしていくと同時に独自の教育研修を始めた。マルハン社内では「イズム」と呼ぶ教育研修のシステムで、それは太平洋クラブでも採用されている。
韓俊は「イズムは採用にも通じるものなんです」と言っている。
「マルハンでも太平洋クラブでも、私がやったことは採用と働く風土を作ることでした。いくら教育しても、いくら人事制度を作っても、なかなかよくはなりません。採用と風土づくりをすれば施設型の接客サービス業はよくなっていく。
なんといってもまずはサービスが好きな人、サービスをしたい人を採用すること。そして、その人たちがいいと思えるような風土をつくっていく。
会社の風土を形作るものがイズムなんです。イズムに共感する人を採用する。そして、イズムに則って会社と人の動きを回していく。経営者は共感して入った人たちを賞賛する。するとそういう人たちは残っていく。
共感しない人、サービスが好きではない人は自分の居場所はないと思って出ていく。会社はやめるべき人がやめて、残るべき人が残るような組織であるべきです。どこで働くかは人間の自由なのですから、共感していないのに、そこで働く必要はない」
経営者は教育より先に労働環境を整備すべき
「そして、無理やり、枝葉末節まで人間を教育研修することはないと私は思っています。あなたはここが足りない、あなたのウィークポイントはここだから、これを変えなさい、あるいはこの点を成長させなさい……。
実際の仕事のなかでは、そこまで教育する必要はありません。会社が人を評価する尺度を作り、尺度によって人を評価しても、言われた本人はピンとこないと思います。
それより経営者がやるべきことは労働環境を整備することです。施設をきちんと作ること。店舗、クラブハウスの設備をよくする。ゴルフ場であればコースのメンテナンスをよくする。次に給料も上げる。ここまでは経営者がやれる世界です」