世界の公共放送と比べたNHKとBBCの受信料

世界各国の公共サービス放送の受信料はどうなっているのだろう。英下院図書館の報告書(2020年1月時点)に日本、韓国、南アフリカを加えグラフを作成してみた(図表1)。NHKの受信料は衛星放送も受信できる衛星契約月額2220円の12カ月分計2万6640円で比較した。NHKやBBCの受信料が比較的高いのは予算に占める受信料の割合が大きいからだ。

各国公共放送の年間受信料(単位:ユーロ)
英下院図書館の報告書などを基に筆者作成

BBCの受信料収入は10年度の35億1000万ポンドから20年度には37億5000万ポンドに増加。受信料収入は全体の4分の3を占める。受信料以外の収入は商業活動、政府資金、著作権使用料、賃料収入など。受信料を払わない人の割合は10年度の5.2%から19年度には7.25%に増え、20年には5万5061人が刑事訴追されている。

PCやスマホ、タブレットでラジオやテレビにアクセスする人が増えたため、TVやラジオの所有と連動した受信料制度は時代遅れになっている。受信料以外の主な収入モデルにはサブスクリプション、広告、課税、寄付などがある。

政治が分断し、政府が公共サービス放送の独立性を低下させようとする傾向が強まる中、政府資金に依存しない運営は公共サービス放送の死活問題だ。

高齢者は払えない、若者はそもそも観ない

高齢者は受信料の支払いに窮し、ユーチューブ、インスタグラム世代の若者たちは「めったにBBCを視聴しないのにどうして受信料を支払わなければならないの」と不満に思っている。そして民間と競合するドラマやエンターテインメント、スポーツをどこまで受信料収入で賄うのかという大きな問題も残る。

BBCは改革なくして生き残れない。しかし政治に翻弄され、後先を考えずに拙速に受信料を全廃してしまうと「角を矯めて牛を殺す」ことにもなりかねない。その意味で、世界に冠たるメディアの巨人は、氷河期をさまようマンモスのように「存亡の危機」に瀕していると言えるだろう。

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