BBCは2万人のスタッフを抱えるメディアの巨人

日本放送協会(NHK)のモデルとなった公共サービス放送のBBCは全国ネットのテレビ10チャンネル、地域のテレビ番組、インターネット・テレビ・サービス、全国ネットのラジオ10局、地域のラジオ40局、広範なウェブサイトに加え、英語以外の42言語でニュースや情報を世界に発信する提供するBBCワールドサービスを提供する文字通りメディアの巨人だ。

スタッフは総勢2万2219人。2020年度の収入50億6400万ポンドのうち37億5000万ポンドが受信料で賄われている。1世帯当たり年間159ポンドの受信料について、ナディーン・ドリス英デジタル・文化・メディア・スポーツ相が1月16日、こうツイートし、BBCに激震が走った。

受信料についての発表は今回が最後となる。高齢者が実刑判決で脅されたり、執行人が玄関ドアをノックしたりすることはなくなる。今こそイギリスの優れたコンテンツのための資金調達、支援、販売の新しい方法について議論し、討論する時だ。

ドリス氏の念頭にはBBCの受信料全廃があるのは明らかだ。公共企業体のチャンネル4の民営化も唱える。

BBCの受信料未納者は投獄されることも

イギリスでは、BBCの受信料を収めないと最高1000ポンドの罰金と法的費用の支払いを命じられる。75歳以上の高齢者は受信料を支払う必要はなかったが、20年8月以降、最低年金の保証を受ける高齢者に限定された。未納者は刑務所に放り込まれることもある。ドリス氏のツイートは投獄を武器に弱者に支払いを迫る受信料制度の問題点を浮き彫りにしている。

監房に入れられる囚人
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かつて「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家のモデルとされたイギリスでは今も医療サービスは原則無償で受けられる。一度は民営化された鉄道はコロナ危機による経営悪化で事実上“再国有化”されたと揶揄やゆされる。ボリス・ジョンソン英首相の後ろには国家の介入を極端に嫌う強硬なリバタリアン(市場至上主義者)たちが控えている。

規制から逃れて自由になると大見得を切って欧州連合(EU)から強硬離脱したものの、逆にお役所仕事は増え、コロナ危機で公共支出も膨れ上がった。保守党は看板の「小さな政府」を断念し、最大野党・労働党の専売特許「大きな政府」に舵を切らざるを得なくなった。そのフラストレーションが、ジョンソン英政権に手厳しいBBCに向けられる。