ロシアが達成を狙う戦略目標とは何か

今回、ロシアがウクライナに対して突きつけている要求は、まさにロシアの「緩衝地帯」になれということである。今後、もしロシアが黒海沿岸地帯等を確保し、その上で仮に一旦戦闘が収まったとしても、ロシアが考える自国の安全保障はそれによっては完成しない。ウクライナを「緩衝地帯」にする、換言すれば「ウクライナを支配下におく」という戦略目標を達成するまで、いずれまた攻撃を仕掛けてくるであろう。

戦車
写真=iStock.com/Alexey Molotov
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このような侵略が段階的に行なわれ、その都度、既成事実を積み重ねていけば、ロシアはいずれその戦略目標を達成することになる。それで戦争が終結すれば、欧州には再び相対的な安定が訪れるだろう。ただそれは、冷戦時代に東ヨーロッパ諸国の犠牲の上に成り立っていた安定が、今度はウクライナ、あるいは場合によってはさらに他の旧ソ連諸国等の犠牲の上に成り立つ安定に代わるということに他ならない。

日本にも突きつけられている深刻な課題

我々はこのようなプロセスを許し続けるのだろうか。冷戦時代の安定を学術的に論じるとき、「緩衝地帯」と呼ばれた地域にも主権をもつ国々があり、そこには大国と同じ人間が住んでいて、自由を享受すること、家族をもって毎日を幸せに過ごすことを願うごく普通の人たちが暮らしていたことを忘れてはならない。

今回の軍事侵攻に端を発する戦争の結果、ロシアが支配地域を拡張した上で一旦戦闘が収まるような場合はもちろん、ウクライナがロシア軍を撃退して暫定的にせよ停戦が実現する場合であっても、いずれにせよ数えきれないほどの何の罪もないウクライナの人々の犠牲の上に立った停戦にしかならない。

このようなことを許さないとすれば、我々は何をすべきなのか。これは日本にも、どの国にも突きつけられているもっとも深刻な課題であり、決して欧州に限定されるものではない。