4月に完全試合を達成した千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手は、高校時代から注目されていたが、監督が連投を回避したことなどから、春・夏の甲子園大会には出場していない。神戸親和女子大学の平尾剛教授は「過密日程で連投を強いる甲子園大会は、高校生にとって負担が大きすぎる。プロスポーツではないのだから、あり方を見直すべきだ」という――。
記録ずくめの完全試合を達成した佐々木朗希投手
今年度のプロ野球が開幕してまもなくの2022年4月10日、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が完全試合を達成した。完全試合とは、相手チームの打者を一人も出塁させずに勝利することである。安打も四死球も許さず9イニングで27個のアウトをきっちり27人から奪うという離れ業だ。
過去をさかのぼれば槙原寛己氏(元巨人)以来28年ぶり、史上16人目の快挙を、若干20歳の佐々木投手はやってのけたわけである。しかも13者連続三振(日本新記録)、そして1試合19奪三振(日本記録タイ)という記録までついたド派手なパフォーマンスであった。
絶対的エースながら疲労を考慮し県大会決勝で登板を回避
「佐々木朗希」と聞いて思い出すのは3年前である。
当時、高校3年生だった佐々木選手は大船渡高校のエースだった。160km/時を越えるストレートを武器にするチームの大黒柱でありながら、第101回全国高等学校野球選手権大会(以下、甲子園)への出場をかけた岩手県大会決勝戦はグラウンドに立たなかった。監督の国保陽平氏は、決勝戦に至るまでの連投による疲労を考慮し、「故障を防ぐため」という理由で佐々木選手を出場させなかったのだ。
試合は2–12の大差で花巻東高校に敗退。同校史上初となる「甲子園出場への夢」はかなわずに終わった。
この佐々木選手の起用をめぐってはさまざまな論議を呼んだ。
元プロ野球選手の桑田真澄氏、太田幸司氏、大越基氏が賛意を示したのに対し、他校の野球部監督やプロ球団のスカウト陣からは否定的な意見が飛び交った。テレビのワイドショーもこぞって取り上げ、野球界を超えて社会全体を巻き込んだ論争になったのは記憶に新しい。