【写真10】で示すように外雌器の中央部は、丸く大きく陥入している。生殖口はその中央の左右端にある。白く見えるのはストロボの反射光である。
【写真11】は数本の紐状の黒褐色の交尾栓が付けられている。交尾器は鍵と鍵穴の関係にあり、これがうまくかみ合わないと交尾できないため、この交尾栓は役割を十分に果たすと推定される。
どのように交尾栓を形成するのだろうか。コクサグモの交尾を観察していたら、いつもと少し様子が違う。精子を押し出す雄の交尾器の血囊の収縮が見られない【写真12】。
自分の交尾器を置き去りにして蓋をする雄グモも…
しばらくして交尾器を放したとき、雌の外雌器に白い交尾栓が見られた【写真13】。つくられたばかりの交尾栓は白色であるが、時間とともに固まり黒褐色に変化していく。
コクサグモは雌に催眠術をかけて交尾するが、交尾後さらに催眠術をかけてゆっくり交尾栓を形成していた。
同じ交尾栓でも分泌物ではなく、交尾器先端の一部が取れて外雌器に残されたものが分泌液で付けられ、それが他の交尾を妨げるという報告もある。
アカオニグモ(8)、コガネグモ、オニグモ、そして広島県やその周辺に分布するナミハグモの一種であるジンセキナミハグモである。
ジンセキナミハグモは、雌の外雌器は丸く大きく開いており、交尾後には雄の交尾器の一部である栓子の先端が生殖口に蓋をしたように取り残され、交尾栓としての役割を果たしている(9)。