これは個人に限らず、企業全体の仕組みの中でも同じことがいえます。

たとえば、私はある飲料メーカーの工場を見学したことがありますが、広大な工場内でほとんどの作業はロボットが担っており、人はその管理をするためのほんの数人しかいませんでした。

企業全体の業務に対して、人が担う割合はごくごくわずかになっていることを実感した出来事でした。

韓国よりも賃金が低くなった日本の現状…

いまや、個人も企業も、いかに労働時間を最小にしながら付加価値を最大限出せるようにするかが重要となるフェーズに入っていることは間違いありません。

特に個人の場合、労働収入以外で収入を上げる仕組みを作らないと、資産を増やすことが難しい時代になっています。というのも、日本の実質賃金は数十年にわたって足踏み状態にあるからです。

給与明細の一部
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

OECD(経済協力開発機構)が調査した「2020年世界の購買力平価」資料をもとに、朝日新聞が報道した記事によると、日本の実質賃金は年間424万円と、OECD加盟35カ国中22位。対して、1位のアメリカは約763万円でしたから、その差は2倍近くにもなります。

1990年までは日本よりも低かったフランス、イギリス、韓国にも追い抜かされているのが現状です。特に韓国は、2000年ごろには日本の約半額だったのですが、2015年には日本は抜かれ、現在ではむしろ大きく差をつけられていることが分かります。対して日本は、この30年間ほぼ横ばいです。

最小労働、最大価値を目指せ

これを個人の話に落とし込めば、労働収入だけに頼っているとじり貧になるだけ、ということが分かります。

「創業者が株式公開で自分の株式を譲渡し、巨額の利益を得た」といった報道が時々あります。広く一般の投資者へ新規株式公開する「IPO(Initial Public Offering)」によって、巨額のお金を手に入れるのはまさしく、多くの起業家の夢でもあります。有名なのが、ファッション通販大手であるZOZOの創業者の前澤友作氏でしょう。

創業者の苦労がむくわれるのがIPOですが、とはいえ、それまでの創業者の労働やかけた時間に対してお金が入ってくるわけではありません。投資家たちは創業者が作ったお金儲けの仕組みに価値を見出し、株式投資をします。その現在価値としてのお金が、創業者に入ってくるわけです。

つまり、より多くの収入を得るためには、「より長時間働けばよい」という考えを捨て、いかに自分の労働を最小限に抑えながら世の中に大きな価値を生むかを考える――すなわち、「労働時間」と「収入」を切り離すことが重要なのです。

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