被害者まで責め立てる「勧善懲悪の洗脳」

公正世界仮説がやっかいなのは、「悪い人は、最後はひどい目にあう」という考え方が、「ひどい目にあっているのは悪い人だから」という逆向きにも心を動かしてしまう点です。

そのため、公正世界仮説を現実世界に当てはめると、ひどい目にあった人に対して、「おまえは悪人だからしようがない」と責め立てる心理が働いてしまったりします。

たとえば、犯罪被害にあった人がいると、多くの人が同情する中で、同時に「この人にも何か反省すべき点があったのでは」という声が必ず上がります。

「痴漢にあったのは、あんなに短いスカートをはいていたからだ」
「盗難にあったのは、防犯意識が低いからだ」
「病気になったのは、生活習慣が悪いからだ」

ひどい目にあった人の側にも何らかの過失があったかのように責めるのが、勧善懲悪のブレインロックがかかっている人の特徴です。

“犯人探し”が過熱する真因

新型コロナウイルス感染症の騒動の中でも、クラスターが発生するたびに“犯人探し”が過熱しました。

ウイルスに感染した人に対して、罪を犯したかのように責め立て、社会的な制裁を加えるような「感染者バッシング」が相次ぎました。中には、医療関係者やそのご家族への誹謗中傷もあったといいます。

冷静に考えれば、新型コロナウイルス感染症拡大の犯人は、潜伏期間が長く感染力が強いという、ウイルスそのものです。感染した人に非はありません。

ところが、公正世界仮説という洗脳を受けると、そういった事実と関係なく、ひどい目にあった人こそ攻撃対象だと、固く信じてしまうのです。

ステレオタイプから外れるものに対して攻撃的になる

公正世界仮説には「ステレオタイプに固執する」という弊害もあります。

つまり、「動物好きは性格がいい」とか「保育士さんは優しい」といったたぐいの思い込みです。そして、勧善懲悪と同じように、そこから外れることに対して許せない気持ちになり、やはり攻撃を始めるのです。