「小金もうけ」願望のある在宅ワークの人の落とし穴
「私はただ、ごくふつうの求人サイトを見て、副業に応募しただけなんです……」
都内在住の40代の男性はそう話します。でも、男性はその後、自分の銀行通帳(口座)を騙し取られました。なぜ、そんなことになってしまったのか。
男性は、巧妙な詐欺グループのやり口に、自分と同じようなことを繰り返す人が出てほしくないという思いから、重い口を開いてくれました。
男性は、脱サラして飲食業界で仕事を新たに始めようとしたものの、仕事が少なく収入が減っていくなかで、何か自宅でできる副業はないかと、ネットで上位に出てくる求人・副業サイトを見ていました。すると「短時間で、近所でできる仕事」に目が留まります。
収入事例として「1カ月目は約5万円稼げて、その後は、15万円ほどの収入が定期的に得られる」とあります。そこで住所、名前、メールアドレスを記入して応募すると、さっそく、「山下」と名乗るその会社の担当者からメール連絡がありました。
「ご自宅周辺での作業になり、不動産関連のお仕事です。作業自体は難しくはありません。報酬は期間にもよりますが、月額1万円〜50万円になります。詳しい話をお聞きになりますか?」
自宅ででき、うまくやればコスパの高い副業になるのではないか、と男性が仕事に前向きな返信をすると、詳細な内容が送られてきます。
「ご紹介するのは、秘匿性が高いクライアント先企業の税金・節税対策を手伝う仕事です。あなた様にはまず会社を設立して頂きます。ただし2年後には、税務調査対策のために廃業させて頂きますので、2年間しかできないお仕事になります」
会社を設立して廃業させる……。何やら裏のありそうな案件に思えます。そこで「借金など背負わされる危険などはないでしょうか?」と強い警戒心を持って、男性が尋ねると次のような回答がありました。
「そもそも、新しい会社に誰も簡単に融資などしてくれませんよ。あなた自身が申し込まないと、借金などはできませんから、ご安心下さい」
「でも、2年後に会社を廃業するんですよね。その後のこちらの生活には何か悪い影響が出るのではないですか?」
「いいえ、例えば、個人で借りるローンやクレジットなどに影響はまったくありませんので、どうかご心配なさらないで下さい」
その後も男性は時間をかけて、あらゆる角度から質問しましたが、すべてのことに丁寧に答えてくれる姿勢に警戒心が徐々に緩み、「この人に任せれば大丈夫だろう」という気持ちになっていったといいます。
そして頃合いを見はからうかのように、「詳しい説明を電話でさせて頂きたいと思いますが、いかがですか?」と尋ねてきました。男性は話だけでも聞いてみようと思い「はい」と返信します。万が一、途中でヘンだなと感じたら、その時点で断ればいい、と。