要介護2の86歳母親はどの施設を選ぶべきなのか

ところで、筆者が相談を受けていて気になったのは、母親やBさんにとって、介護を受ける施設は「特別養護老人ホーム」しかないと思い込んでいることだ。

特養についてはご存じの方も多いと思うが、現在の特養は「要介護3以上」でないと、原則として申請ができない。要介護2でも申請ができるのは、緊急性が高いなど、自治体が特別に認めたケースに限られる。

人けのないケアホームの廊下の突き当りに電動車いす
写真=iStock.com/Heiko119
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しかしながら、介護を受ける場所として「介護型ケアハウス」を選択すれば、要介護1から申請・入居が可能になる。介護型ケアハウスは数がかなり少ないために、探すのも見つけるのも大変であるが、相談者には筆者が見学した中で、おすすめできる介護型ケアハウスを2つ紹介した。Bさんには2つとも、見学に行ってもらうように促した。

介護型ケアハウスの存在すら知らなかったBさんだが、紹介した2つの施設とも気に入ってくれた。母親に話をしたら、「転居してもいい」とのこと。見学した介護型ケアハウスのうち、より気に入ったほうに申し込みをする流れで、母親とBさんは合意した。

申し込み予定の介護型ケアハウスは、見学時点では待機者が2人だったので、それほど待たずに入居できそうである。月々の費用は、雑費などを含めて15万~16万円程度。入居時にかかる費用は、30万円程度の保証金だけで済む。遺族年金だけでは毎月赤字が出るとはいえ、貯蓄の切り崩しは数万円程度。介護付有料老人ホームに住み替えることを考えれば、かなり負担は抑えられる。

現在は、母親の転居プランが前に進み始めたので、そのことをAさんに伝えてもらう努力をしているところである。筆者はAさんとの面談を希望したものの、AさんからはどうしてもOKの返事をもらえず、Bさんを通してのプラン提示になった。

実家を売却してAさんの生活費を作る

Bさんの妹(次女・55歳)にも意思確認をしたところ、遠方に住んでいて、介護のために実家に立ち寄れないことを詫びながら、母親の転居には賛成しているそうである。転居プランは現実味を帯びてきたので、次の問題は、Aさんの生活費の捻出方法となる。

現状で、お金を作れるアテは実家のみ。建物は築40年を超えているが、土地は5000万円前後で売却できるのではないかと予想できた。実家の売却案を提示したところ、売却案にBさんも妹も賛成してくれた。

この先は、母親の転居が実現したら、実家を売却する流れになる。母親は介護認定を受け身体的な介護が必要であるものの、認知症の診断は受けていない。そのためなるべく早く、実家の売却を進めたほうが良いこともお伝えした。母親が認知症と診断されてしまうと、「一切の契約」ができなくなるため、家の売却プランも頓挫してしまうからだ。

少し話は逸れるが、かなり古い家の場合、当時の売買記録が残っていないために、低い取得費しか経費に計上できないケースも多く、この家庭の場合も売却益が出そうな見込み。売却益に対して税金がかかりそうなので、税理士に相談することもお勧めした。