1948年に創設され日本語・言語に関する知を探究する研究機関「国立国語研究所」編の『日本語の大疑問』(幻冬舎新書)の売れ行きが好調だ。コラムにストの辛酸なめ子さんは「最近の若者が使う言葉を含め日本語がおおらかで懐が深い言語だということを再認識できます」という――。
お互いに、赤対紺に対して背景を戦います
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マツコも頻用「めっちゃ」は「超」を駆逐したのか

個人的にここ数年、強調表現である「超」から「めっちゃ」への変遷をなんとなく追っていました。「めっちゃ」はここ10年、若い世代に使われてきた言葉。30年ほど前は「超」が多用されていました。

「めっちゃ」は、40代以上は気が引けるのか、あまり大人は使っていないイメージでしたが、バラエティ番組でマツコ・デラックスや坂上忍など大人世代が頻用することで、年齢層の幅が広がっていきました。

同年代の友人が「めっちゃ」と使うのを聞くようになったのもここ数年です。2021年、出川哲朗が番組内で「超焦って、めっちゃ笑われて……」と、両方の表現が入り交じった発言をしているのを聞いて、大人はやはり「超」が脳に定着しているのかもしれないと思いました。

しかし「めっちゃ」が他の強調語を全て駆逐したわけではなく、2019年頃、「テラスハウス」に出ていた田辺莉咲子が、「めっちゃ」でも「超」でもなく「とっても」という表現をよく使っていたのが印象的でした。派手なイメージだったのが、丁寧な言葉遣いに好感度が高まりました。

そして2021年、番組内でギャルモデルのゆきぽよが「超センスいい」と発言したときは驚きました。ヤングの代表のようなタレントが「超」という強調表現を今も使っているとは。もしかしたらまだ「超」は死んでいないのかもしれない……。

「めっちゃ」も「とっても」も「超」も「すごい」も「非常に」も、今の世に共存しているのです。昨今、若者言葉は移り変わりが激しいと言われていますが、中には、死語と思われても復活したり、脈々と使われたりする例もあるのでしょう。「やばい」なんて江戸時代から使われているそうです。