※本稿は、八子知礼『DXCXSX』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
日本ではIT人材の7割がITベンダー企業に集中している
企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で大きな課題となっているのが人材の問題です。
IPA社会基盤センターがまとめたIT人材白書によると、日本ではIT人材の72%がITベンダー企業、28%がユーザー企業に属していると記されています。その一方で、米国では35%がITベンダー企業、65%がユーザー企業に所属しているとあります。
つまり、米国ではソフト開発などのIT化を内製で進めている企業が多いということを表しています。その反対に、日本では外部へ開発を委託する事例が多く、かねてより「ITベンダー依存体質」という言い方で、日本企業のITが抱える課題として指摘されていました。つまり、この依存体質がDX推進の阻害要因の1つであるという見方があるのです。
では、依存体質の何が問題なのでしょうか。ここで、DXの本質を考えることが大切です。
外部のIT人材ではうまく「全体最適化」できない
DXは「デジタル技術を活用した変革」です。変革を進めるには、デジタル化を行なうだけではなく、組織のあり方やビジネスの根幹を変える覚悟が求められます。つまり、デジタル化の進展とともに、組織のパフォーマンスを最も発揮できる形に「全体最適化」を行なう必要があります。
とはいえ、一口にデジタル技術を駆使すると言っても、DXの本質は組織やビジネスの変革にあるわけですから、社内のあらゆる場面や場所(部署や現場)の構造や考え方にも手をつける必要があります。
たとえば、「生産現場に導入するIoTのシステムは、○○が最適でDX推進の要になる。ただし、そのシステムを導入して全体最適化を進めるためには、組織構成や業務フローを変えなければならない」となった場合、果たして外部のITベンダーがそのような業務知識を前提とした内部環境の機微までくみ取らなければならないレベルの提案ができるでしょうか。