約600人のITエンジニアを抱えるトライアルHD

内製化の事例として、九州を中心に小売・流通業を全国展開するトライアルホールディングス(以下、トライアル)をご紹介しましょう。

トライアルは、グループをあげて小売業のデジタル化/スマート化を推進しており、グループ内に社員として約600名を超えるITエンジニアを抱えています。この会社は、AIカメラとスマートレジカートを活用した店舗「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」を2018年にオープンしました。

このお店では、AIカメラで客の属性や購買行動を分析すると同時に、レジカートでの決済と商品レコメンドを実現しています。AIカメラで、顧客が店内でどのような動線をたどり、どのような商品を手に取って棚に戻したか、といった顧客の行動を分析可能な仕組みを構築しています。

スマートレジカートは液晶モニターに関連商品を表示することで、買い忘れ等を防止しつつも追加購入を促す形で客単価の向上にもつながっています。また、レジに並ぶ必要がないことから利便性が高く、高い顧客満足度によるリピーターの増加も見込めます。

AIカメラ
写真=iStock.com/Ekkasit919
※写真はイメージです

顧客の行動データから売れやすい商品陳列を分析

さらに、顧客の行動データを解析することで、様々なマーケティング上のシミュレーションが可能です。たとえば、同じメーカーの商品でパッケージが赤、青、緑、黄といった色違いが並んでいる場合、赤の横には黄色を置いた方がよく売れる、といった分析と検証が可能になります。

八子知礼『DXCXSX』(クロスメディア・パブリッシング)
八子知礼『DXCXSX』(クロスメディア・パブリッシング)

場合によっては、納入業者やメーカー側と分析データを共有し、パッケージの色や柄を変更した方が売れる、といった施策を行なうこともあります。

このように、納入業者とデータを共有することで、同種の商品で競いあうライバルメーカーが、互いに切磋琢磨せっさたくまし、売れる商品、売れる方法を考える基盤として活用しています。

納入業者側もディスカウント勝負の消耗戦からの脱却を図ることができるメリットがあります。

トライアルは、グループ内に抱えるITエンジニアを中心に、このように極めて先進的な仕組みを構築し、独自のDXを推進しているのです。