新卒の就活市場でアート系学部の学生の採用に前向きな企業が増えている。なぜ芸術系、美術系学部の出身者への需要が高まっているのか。プレジデントFamily編集部が採用側の思惑と内定者の素顔に迫った――。

※本稿は『プレジデントFamily2022春号』の一部を再編集したものです。

 「プレジデントFamily2022春号」より
  

日本社会には新しい視点が必要

近年、新卒採用で芸術系学部の学生を高く評価する企業が増えてきている。美大生や芸大生向けの就職サイトには、三井不動産やアクセンチュア、DeNAといった名だたる企業が名を連ね、採用に前向きな姿勢を示しているのだ。

こうした採用の変化について、新卒・転職サービス大手のマイナビ編集長・高橋誠人さんは次のように語る。

「10年ほど前までは、多くの企業が新卒採用で均質な人材を欲しがる傾向にありました。素直で元気があって、従来通りの仕事のやり方を踏襲してくれる新卒者を入社させるというのが、日本企業の人事のあり方だったからです」

こうした採用方法をとってきた日本企業に変化の兆しが表れた。きっかけは日本経済の不調だ。

「高度成長期以来、日本経済を支えてきたのは、微修正を重ねて生産の効率や製品の品質を高める“改善型”の商品開発やサービス提供でした。こうした商品開発を行う企業であれば、組織内の人材の均質性が高いほうが有利です。しかし、2000年代半ばから、多くの日本企業で従来型の成功パターンが通じなくなってきました。iPhoneや、フェイスブックをはじめとした各種SNSのような革新的なデザインや機能を持ったサービスが市場を席巻し、ITの進展でビジネスの環境も変化が激しくなりつつあることが、日本企業を劣勢に追いやっています」

そうしたなかで、企業が求める人材像も変わってきたと高橋さん。

「まず、企業が多様な人材を欲するようになりました。同じような人材ばかりでは、業界や企業の閉塞へいそく感を打破するような斬新なアイデアが出てきません。美大・芸大生のような人材に企業の目が向くようになったのも、そうしたことが一因でしょう」

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