クリミア危機とは何か

ウクライナには、ウクライナ人もいればロシア系の人もいるでしょう。だから、大統領選挙をすると、ロシアとの関係を改善したいという親ロシア派の大統領になったり、ロシアから離れたい親EU派の大統領になったりするわけです。

2013~14年にかけて、当時のヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領は親ロシア派でした。ロシアとの関係を維持したい大統領に対して、民主化運動が起きて、それが反政府運動に発展。ヤヌコビッチ大統領が逃げ出して、ロシアに亡命するという出来事がありました。

この大統領は、国の金を使って自分の家をまるで宮殿のようにしていたことが、逃げ出したあと暴露されました。それによって、ウクライナの特に西側では、反ロシア感情が一挙に盛り上がります。

兵士のシルエットがあるコンクリートの壁に描かれたウクライナの国旗
写真=iStock.com/Tomas Ragina
※写真はイメージです

クリミア半島を占領した正体不明の武装勢力

すると、プーチン大統領が突然、クリミア半島はロシアのものだと言い出したのです。ウクライナが独立したら、クリミア半島がウクライナのものになったでしょう。プーチン大統領は、クリミア半島がウクライナのものになってしまったことを、苦々しく思っていたのでしょう。

ウクライナの大統領が逃げ出して国内が混乱している。そのすきをついて、突然、このクリミア半島はもともとロシアのものなんだと言い始めたわけです。そして、正体不明の武装勢力がクリミア半島を占領します。組織立った大勢の兵隊が出動したのですが、軍の国籍を示す印もつけていませんでした。

一方、クリミア自治共和国では、クリミアがウクライナから独立をし、ロシアに帰属するかどうかを問う「共和国政府」による「住民投票」を実施しました。その結果、ロシア編入に賛成という票が圧倒的多数を占めたと発表され、ロシアは、クリミア自治共和国の選挙結果を承認するというかたちで、クリミアを「併合」しました。

ウクライナ政府は、これをロシアの武力による違法占拠として承認していません。