プーチンの「うそ」
ウクライナではロシアに亡命したヤヌコビッチ大統領のあと、親EU派のポロシェンコ大統領を経て、2019年からヴォロディミル・ゼレンスキー大統領になりました。
プーチン大統領は、我々はロシア軍をクリミア半島には一切送っていない、とずっと言い張っていました。国際社会は、ロシアが軍事力を使って、クリミア半島をウクライナから奪い取ったと考え、ロシアに対する経済制裁を始めます。EUやアメリカが、たとえばロシア製品を買わない、あるいは、ロシアにいろんなものを輸出しないという制裁をとるようになりました。
プーチン大統領は一切ロシア軍を出していないと言っていましたが、クリミア半島にロシアが入ってから1年経った記念式典で、「我々ロシア軍によってクリミア半島を奪い返すことができた」と言いました。
つまり、前の年、ロシア軍は一切出していないと言っていたのは全部うそだったのですね。そして、この時プーチン大統領は、クリミア半島併合に対して、ヨーロッパやアメリカが反発することに備えて、核兵器の使用を準備していたとまで言ったのです。
2014年は相手にならなかったウクライナ軍
ところで、ロシア軍がクリミア半島を占領した際、ウクライナ軍の兵数はわずか5万人くらいで、ロシア軍の相手になりませんでした。
さらに、ウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力にも対抗できず、武装勢力はドンバス地方のドネツク州とルガンスク州に、それぞれ「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」という自称国家を設立しました。
その後、ウクライナは徴兵制を施行して20万人の兵員を確保、軍務経験のある予備役の兵士が90万人に上るまでに軍を強化しました。
2022年1月からは、ウクライナが侵略を受けたら、すべての国民が国土防衛にあたる義務があるという法律が施行されました。
8年続いた内戦から、ついにロシアの侵攻へ…
ウクライナでは、クリミア併合からずっと、親ロシア派の武装勢力とウクライナ政府軍との内戦状態が続いています。この親ロシア派の武装勢力はみんなロシア製の武器を持っています。
でも、プーチン大統領は、「ウクライナにはロシア軍の兵士はひとりもいない、彼らはロシア軍をやめて、自主的にウクライナに行っているんだ」という言い方をしていました。これはどういうことなのでしょう?
実際に何が起きていたかというと、ロシア軍がウクライナの親ロシア派の住民を支援するために国境まで行きます。すると、そこでロシア軍の将校がロシア兵に向かって、「お前たち、たった今をもって、ロシア軍をやめろ。今から我々はウクライナに行く」と言うのだそうです。つまり、ウクライナ領内では元ロシア兵になる。
ロシアに戻ればロシア軍に復帰しますが、万一捕虜になったり、あるいは、死んでしまったりしたら、元ロシア兵ということにしていたのですね。実際には、ウクライナの親ロシア派をロシア軍兵士が支援をしてきました。
そうして、ついに今回、ロシア軍がウクライナに侵攻したのです。