「官邸パーティー疑惑」で支持率が急降下
しかし、先進的なコロナ政策を打ち出しても政権支持率は一向に上向く気配がない。これは、2020年12月のロックダウン中に官邸で大規模なクリスマスパーティーを開いていたことが世間にバレてしまったことがやはり大きい。当時の英国では、コロナ感染防止のために厳しい行動制限がかかっていたにもかかわらず、官邸スタッフが大笑いしたり、ジョークを飛ばしたりしながらパーティーを楽しむ様子が暴露動画によって広く知られることになったのだ。
官邸が開いたパーティーはこのほかにも10件近くに上ると報じられており、中にはエリザベス女王の夫フィリップ王配の葬儀前夜に開かれたものもあった。当然国民の怒りを買い、支持率は一時、就任以来最低の20%を記録。2019年に欧州連合(EU)からの離脱=「ブレグジット」を看板政策に掲げて首相に就任し、同年末に行われた総選挙で大勝、60%台後半という高支持率に支えられ政権運営をスタートさせた当時を思えば、その凋落ぶりはすさまじい。
ブレグジット後、物流コストの増加や関税の発生などで英国の物価は上昇を続け、そこへコロナ禍というさらなる逆風が吹き荒れた。20年春に打ち出した感染対策の失敗で高齢者を中心に多数のコロナ死者を出し、長期にわたるロックダウンによる大規模な不景気もあいまって、国民から大きなブーイングを浴びた。
世論調査で「首相はウソをついている」が7割近くに
物価高騰をめぐっては、コロナの感染対策に起因する物流の担い手の減少、あるいは作物の収穫に当たる人材不足など、さまざまな原因が複合的に重なり、政策の迷走ぶりはより顕著となった。そこに官邸パーティー疑惑が政権に決定的な打撃を与えたというわけだ。
英国の新聞界は、官邸周辺での数々のパーティー疑惑について、その昔、ニクソン元米大統領が起こした「ウォーターゲート事件」をもじって、「パーティーゲート事件」と報道。ジョンソン政権に対し、徹底的な事実追及を進めた。
当初、官邸自体はこうしたパーティーの存在自体を否定していたが、結局はなし崩し的に認めざるを得なくなった。「すでにシャンパンの空き瓶が官邸近くに捨てられている証拠まで撮られているのに、ボリス(・ジョンソン首相)は往生際が悪い」と近所の主婦がグチっていたことを思い出す。
言い訳に言い訳を重ねた結果、2021年12月にはついに、労働党に支持率を抜かれる異常事態となった。基本的に二大政党制で議会運営されている英国にあって、政権与党が野党の支持率を下回るケースはほとんどない。
当時の報道を読むと、「官邸でコロナ規制に反したクリスマスパーティーがあったと信じる国民」は全体の4分の3に達し、アンケートに応じた人々の7割弱は「首相はウソをついていると考える」と報じられている。