とはいえ、ヤマダ電機に「妥当な価格設定・ポイント制度が魅力」という印象を持つ人は多い。2009年10月、池袋・三越跡地に「LABI1日本総本店 池袋」がオープンしたときは、激安の目玉商品を目当てに1万5000人もの長蛇の列ができた。この採算度外視の集客商品を買い占めてネットオークションで転売する輩も続出したようだ。大規模出店に際して人々の耳目を集める企画を立て、「激安」イメージを浸透させる戦略も他社より一枚上手に見える。
業界関係者によれば、「同社は価格調査のために都内だけでも数百人規模のスタッフを毎日投入し、商品ごとの刻々と変化する価格の情報を本社で集約している」という。販売員は随時最新情報を手持ちのPDA端末で確認し、最安値を客に提示するのである。
「例えば、秋葉原、新宿、池袋など、東京の商圏は非常に大きいですが、エリア面積は狭い。電車賃を200円も出せば短時間で移動可能です。お客様はより安い価格の店に流れます。細かな変動にシビアな都市圏のお客様に私たちは必死で対応しています」(一宮氏)
今回のアンケートでは「価格が同じでも、ヤマダのポイントカードのほうが割がイイ。値引き交渉にもよく応じてくれる」(30代男性)といった声が多数を占めた。
安さと同じくらい評価された項目が「品揃えのよさ」である。日本総本店の、日本最大級の売り場面積に陳列された商品総数は約150万点だった。一宮社長によれば、都市型店舗LABIの第一店舗である大阪・なんば店を出店する際には「都市型の大型量販店に置かれている商品を3カ月かけてすべてチェックし、それを参考に品揃えを考えた」という。さらにイベントスペースをつくり、様々なジャンルの書籍、DVDやゲームソフトなどを充実させ差別化した。他店舗でも一フロアの半分を携帯のiPhoneだけにしたり、薄型テレビを一気に330台以上陳列したりと工夫を凝らす。
品揃えと深く関係するのが店内レイアウトである。LABI店のメーン通路は5メートル、サブ通路は2.5~3メートル。対して他社はおおむね3メートル、1~1.2メートルと狭くなっていることが多い。
またヤマダには上りだけでなく下りのエスカレーターも付き、ベンチも配置されている。そのためベビーカーを押す女性や高齢の客にも負担がかからない。什器の高さも他社は1.8メートル程度でモノを積み上げて量感を増そうしているのに対して、ヤマダは1.35メートルに統一している。
「最も商品が見やすいのは目線からプラス&マイナス30度の角度まで。このゴールデン・アイ・ゾーンを外れたところに置いても見てもらえないのです」(一宮氏)
つまり、ヤマダは本来ならもっと品数を増やすことができるが、あえて売れ筋に特化することでスッキリと陳列を行い、居心地のよさを演出して、購買意欲を高める作戦をとっているのである。それを徹底するために、「店内のレイアウトも幹部自ら線を引く」(前出・関係者)といわれている。