鉄則を守らなかった旧民主党政権の末路
筆者も十数年前、ある政治家のキャッチコピーや政策集に関わったことがあるが、当時はこの鉄則がわからなかったので、有権者にわかりやすいように、その政治家の政策を詳細にまとめてしまった。すると後日、政党スタッフから「党内でもいろいろな意見があるので、具体的なことは言わないように」と訂正を求められたことがある。
こういう「大事なことほどぼやかす」というルールを軽視すると、政治家は致命的なダメージを負う。わかりやすいのは、やはり旧民主党政権の失敗だ。これまでの自民党政治との差別化のために「マニフェスト」として具体的な政策目標を掲げたのである。
しかし、イデオロギーが違うだけで派閥政治という構造は何も変わらない。当然、マニフェストはほとんど実現できなかった。それが「口だけ」と激しいバッシングを引き起こし、政権転落を招いてしまった。
安倍政権が「日本を、取り戻す。」を打ち出したワケ
ただ、ぼやかしているだけだと歯切れが悪くて印象も悪い。そこで必要となってくるのが「勢い」だ。具体的なことはほとんど何も言っていないのだが、勢いのある言葉を元気よく訴えるのだ。
現在の自民党のキャッチコピー「新しい時代を皆さんとともに。」とか、安倍政権時代の「日本の明日を切り拓く」「日本を、取り戻す。」なんていうのはその典型例だ。
この「批判される恐れもある内容は、できるかぎり元気にぼやかす」という暗黙のルールは、政治家の下で働く官僚たちにも適応される。
それを踏まえて、「ワクチン接種者又は検査陰性者を対象にイベントチケットの2割相当分(上限2,000円)の割引支援」という政策に、政治家や官僚がどんなネーミングをつけたがるのかということを想像していただきたい。