バズる仕掛けやセンスのいいワードはむしろ迷惑

一般の方はあまりご存じないかもしれないが、政治や行政の世界でつけられるネーミングやキャッチコピーというものは、「ダサくてベタなほうが正解」という暗黙のルールがあるのだ。

民間企業のマーケティングやPRでよく言われる、「バズるようにユニークな仕掛けをする」とか「世間の評価が上がるようなセンスのいいワードをチョイスする」とか「若い世代にアピールできるように時代や流行をうまく取り入れる」なんて発想はまったくない。

むしろ、そんなことをやろうとしたら政府の担当者から「あ、そういうのいらないんで」と迷惑がられてしまうだろう。なぜかというと、ヘンに若者ウケを狙ったり、世間の注目を集めたりしようとした政府のネーミングというのは、目も当てられないほどスベって、関係者が吊し上げられるという大惨事に発展しているからだ。

若者ウケを狙い、大炎上した苦い過去

わかりやすいのが、旧民主党政権時代に行われた自殺対策強化キャンペーンの「あなたもGKB47宣言!」というキャッチフレーズである。

自殺対策では、悩んでいる人に気づき、声をかけるなどの支援をする「ゲートキーパー」という人々の役割が非常に大きい。しかし、日本ではこれまでゲートキーパーという言葉自体ほとんど浸透していなかった。

そこで当時、社会現象になるほど人気となっていたアイドルグループ「AKB48」に便乗して、「ゲートキーパー・ベーシック」の頭文字である「GKB」を47都道府県に広めたい、とこのキャッチフレーズを考案したのである。

当然、この後付け的な苦しい説明は炎上する。自殺対策に取り組む団体からは「自殺問題をバカにしている」と批判され、「GKB47」は撤回に追い込まれ、最終的にキャッチフレーズは「あなたもゲートキーパー宣言!」へと変更された。

責任者である岡田克也副総理(当時)は国会で厳しく追及され、このキャンペーン決定時に自殺対策をしていた蓮舫参議院議員もマスコミに追いかけ回された。ということは、それらの下で働く、官僚たちもその火消しに追われて、中には「こういう批判を想定できなかったのか」なんて感じで、責任を追及された人もいたということだ。