経常収支は国の稼ぎの実力値

ここで、簡単に経常収支について説明します。経常収支は「国の稼ぎ」の実力値です。具体的には、(1)貿易収支、(2)サービス収支、そして(3)所得収支に分かれます。

(1)貿易収支は、モノの輸出入の差額です。

(2)サービス収支は、特許料などのサービスの対価の受払いの差額です。訪日客が国内でサービスを享受するなどの旅行収支もサービス収支に入ります。

(3)所得収支は、金利や配当などの第1次所得収支とともに、おもにODA(政府開発援助)からなる第2次所得収支に分かれますが、ほとんどが第1次所得収支です。

国際収支状況

図表1は、ここ数年間の経常収支と、(1)貿易収支と(2)サービス収支を合わせた「貿易・サービス収支」を表していますが、2つのことが分かります。

ひとつは、2015年度以降を見れば、経常収支は毎年20兆円前後の黒字です。かなりの額の黒字額が、国債の残高が増える中で、先の仮説が正しいとすれば、国債の信認を高めてきたのです。

もうひとつは、貿易・サービス収支は赤字の年も少なくないということです。ということは、経常収支の黒字を大きく支えてきたのは所得収支、正確には第1次所得収支だということです。

この国は、貿易やサービスでは十分に稼げない国となっている一方、これまでの海外投資の果実である金利や配当で稼ぐ国となっているのです。その額は年に20兆円を超える額です。

ちなみに、図表1にある「直接投資」は、経常収支を構成する項目には入りませんが、日本から海外、逆に海外から日本への、M&Aや10%以上の株式を取得するための投資を表します。企業をある程度支配するための投資です。こちらは、長い間、日本から海外への投資が超過となっています。これが、配当などを通じて、先に説明した第1次所得収支の黒字の大きな要因ともなっています。