このまま経常赤字が続く可能性も

このように日本の経常収支の構造は、以前の輸出で稼ぐ=(1)貿易収支の黒字というものから、投資で稼ぐという構造に大きく変わっていることに注意が必要です。とくに、2011年3月の東日本大震災以降は、発電用の天然ガスなどの輸入が増加し、貿易収支の黒字が急減、赤字の年も多くなりました。

そして、図表1のこのところの月の数字を見れば、原油などの資源価格の高騰や円安があり、輸入が急増しており、(1)貿易収支の赤字が大きくなり、とうとう全体の経常収支まで赤字の月が続くようになりました。

2022年2月の経常収支は、3カ月ぶりに黒字となりましたが、2月は毎年中国の春節の関係で日本から中国への輸出が増えるため貿易黒字が膨らむ月です。しかし、2021年2月の経常収支(2兆7801億円の黒字)と比べると4割以上の黒字額の減少です。

輸出入だけを表した図表2を見ていただくと、このところ輸入が急増しているのが分かります。図表2は輸出入の数字ですが、2021年前半は輸入が5兆円台から6兆円台だったのが、昨年後半から7兆円から8兆円台に増加しています。先にも説明したように、資源高や円安が大きく影響しています。

貿易統計

日本経済新聞の試算では、ドル・円レートが120円、原油価格が130ドル(1バレル)なら、2022年度は16兆円の経常収支が赤字(42年ぶり)となるとしています。

同じく日本経済新聞の試算では、円相場が116円、原油価格が105ドルという、現実味がさらに高いシナリオでも、8兆6000億円の経常収支の赤字となることです。

ここで、注意しなければならないのは、この経常収支の赤字が、今後も続きやすいということです。それは、ウクライナ情勢にも左右されますが、資源価格の高止まりが相当期間続くということと、さらには前回のこの連載でも指摘しましたが、現状の日銀の政策では円安に振れざるを得ないということが大きな理由です。

このことは、日本のこれまでの国際収支の構造において、とくに儲けの根本となる経常収支の赤字が定着する可能性を示しており、日本が大きな構造変化を起こす可能性が低くないということを示しているのです。