卒業して以降、何もせずに毎日を過ごしていた野中さんに、親友である内田さんは見かねて、「だったら、IWAで働けば?」と冗談っぽくLINEのメッセージを送った。それに対して、野中さんも軽い気持ちで応じた。

「AKBになるのが夢だったから、それを辞めた後に何かしたいというのはなく、とりあえず車の免許を取りに行きました(笑)。ただ、半年間、本当に何もしてなくて、そろそろ何かしないと社会不適合者になってしまうと思いました。16、17歳から芸能界にいるので世間知らずだし」

野中美郷さん。元AKB48メンバーとしてはアルバイト第1号となった
筆者撮影
野中美郷さん。元AKB48メンバーとしてはアルバイト第1号となった

次の目標が見つかるまでと、10月からIWAで働き始める。すると、これまでいた世界にはない居心地の良さがあった。AKB48の活動はやりがいもあったし、キラキラ輝いていたけれど、常に気を抜けない緊張感もあった。野中さんにとって居場所という感じではなかった。

自分を応援してくれる人たちと出会えた喜び

「軽い気持ちでIWAに入ったものの、いざとなったら楽しくなって。最初は週2回の出勤だったのが、だんだん4日、5日に増えました。お客さんにとっても、私がいることが当たり前になっていたから、期待に応えるために頑張ろうと思いました。うそみたいに、毎日がハッピーでした」

積極的に周囲ともコミュニケーションをとった。元来、社交性は高くないというが、スタッフやお客さんにも自ら話しかけた。何が彼女をそうさせたのか。

「友だちの店だから肩の力を抜いて働ける反面、頑張らないといけないとは思いました。でも、決して無理しているわけではなく、自然とできてしまう空気感がありました。それと、お客さんがみな優しくて、味方だったことも大きいです」

芸能活動を続けるつもりがなかった野中さんは、もうファンの人とも会わないまま人生が終わると思っていた。ただ、IWAのおかげでまた自分のことを応援してくれる人たちに出会えたことがうれしかった。この環境がなければ、そんなことは体験できないと感謝した。

元AKB48のメンバーたちの居場所になる

野中さんの入店をきっかけに、元AKB48のメンバーが次々とIWAでアルバイトをするようになった。岡田彩花さん、橋本耀さん、小森美果さんなど、これまでに約10人が在籍した。島崎遥香さんも3日間限定だったが働いたことがある。

「今でもIWAで働いてみたいと言ってくれる子はいます。こっちが申しわけないよと思いながらも、みんなも居場所を求めているのかな」と内田さんはつぶやく。