教育費の負担率トップは栃木、2位は奈良、3位は東京
最後に、教育費負担の軽重に関する地域分布について見ていこう。今回と同じく教育費負担をテーマにした昨年3月の記事では、教育費比率の地域分布については、「全国家計構造調査」を使用したが、今回は「家計調査」によった(筆者注)。
(筆者注)前回は、5年に1回、家計調査の拡大版として同じ総務省統計局が実施している全国家計構造調査の2020年結果が公表されたばかりだったので、これを使用したが、サンプル数が多いとはいえ家計調査と異なり年間平均ではなく調査月である10~11月の月平均値しか得られていないので、やはり、結果にやや限界があった。そこで今回は、サンプル数の少なさを補う意味で、毎月の家計調査の年平均結果のさらに5カ年平均で教育費比率の地域分布を分析した。地域ごとの高齢化の違いによるバイアスについては補正したが、家計調査の地域分析は県庁所在都市の値である点には注意が必要である(もっとも都市化の違いによるバイアスはかえって小さいという比較分析上のメリットもあるのであるが)。
家計調査のデータから図表6には都道府県別の教育費と教育関係費の比率を示し、図表7には教育関係費比率の地域分布をマップで示した。
東京、京都という日本の2大文教都市とその周辺、およびそこからやや離れた北関東や東四国などに教育費負担の大きい地域が分布している。具体的には負担率1位栃木、2位奈良、3位東京、4位香川、5位千葉、6位徳島……となっている。
教育関係費の中でも教育費比率そのもの(図表6のオレンジの部分)は南関東や京都・奈良といった我が国のトップ大学集積地とその周辺で高いが、その少し外側の北関東や東四国などでは、むしろ教育関係費の中でも教育費以外の比率(濃紺の部分)が大きくなっている。
オレンジ色部分の多くは大学の学費が占め、濃紺部分の多くは仕送り代で占められている。従って、教育関係費の高い地域は、「学費過重地域」と「仕送り過重地域」の2種類に分けられるといえよう。
「仕送り過重地域」の代表は、教育費の負担率1位の栃木や4位の香川である。一方、「学費過重地域」の代表は負担率2位の奈良や3位の東京。
反対に、教育費負担が軽い地域を調べてみると、こちらも2種類に分かれている。兵庫、大阪、愛知のように仕送り負担が小さく学費もそれほど高くない地域と、青森、鳥取、沖縄、長崎、北海道のように学費も仕送り負担も比較的軽い地域とである。後者は日本列島の中でも遠隔地に位置している点が特徴である。
教育費負担の大きい地域分布の特徴をまとめると、有名大学の多い東京、京都といった大都市とその通学圏、およびそこからさほど遠くなく、教育熱だけは大都市並みだが自宅通学はできない北関東(栃木、茨城)や東四国(香川、徳島)、あるいは静岡、岡山といった地域である。
逆に、有名大学のある大都市へはエアライン移動せざるを得ないような遠隔地域ではかえって自宅外通学に踏み切る世帯は減ってくるので仕送りも少なくなり、教育費負担も比較的軽く済んでいる。仕送り代がかなりかかって教育費負担が大きくなっている栃木や香川は、地理的にもう少し大学のある地域から離れていれば仕送り代の額は今ほど大きくなっていなかったかもしれない。