(1)コア・コンピタンス経営
  ゲイリー・ハメル、C・K・プラハラード

(2)君主論
  マキアヴェリ(池田廉訳)

(1)と併せて読んでおきたいのが(2)。古典ではあるが、戦略の視点から見ると、運命論が支配的であった時代に、チェーザレ・ボルジアといったリアリストのリーダーを賞賛。現実から普遍を紡ぐ帰納的な生き方を提唱した。イノベーションというのは本質的に帰納的だ。全体から部分を見るトップダウン型のリーダーシップに対し、ボトムアップからのイノベーションには矮小になりがちな点がある。それを超えるための大きな創造性についても考えさせられる。

(3)MBAが会社を滅ぼす
  H・ミンツバーグ

(4)ビジョナリー カンパニー2 飛躍の法則
  J・C・コリンズ

(3)と併せて読みたいのが(4)。飛躍企業11社について調べたところ、それらの企業の経営者に共通するのはジャック・ウェルチのような強力なリーダーシップではなく、控えめ、謙虚、規律を守るという特性であった。これにより経営には分析や理論よりコモンセンスが重要との考え方を提唱。経営をサイエンスと考える事実価値ではなく、アートと捉える価値前提に重点をおき、アンチ分析派のマネジメント論の代表作のひとつとなった。

(5)巨象も踊る
  R・V・ガースナー

(3)と(4)の理論をストーリーとして、わかりやすく楽しみたい人にお勧めする。IBMの元会長兼CEOの伝記。人間の主観を大切にしながら、いかに共感を確立するか。硬直した巨大企業を現場から立て直し、アンチ分析派理論の体現者ともいえるガースナーの対話と実践の記録になっている。

(6)知識創造企業
  野中郁次郎、竹内弘高

(7)Managing Flow 流れを経営する―持続的イノベーション企業の動態理論
  野中郁次郎、平田 透、遠山亮子

(6)では、経営においては、人間の存在意義(WHAT)がまずあり、同時に科学的手法(HOW)を駆使しつつ、本質を問い続ける(WHY)ことが必要であり、企業で働く人間はマネーメーキングマシンではなく、知識創造体であるとの我々の考え方を紹介した。情報処理から知識創造へ、分析よりも実践へ。さらには知識というものを磨き、知恵にまで高めていくことの重要性を説き、(3)と(4)の理論を踏まえたうえで、さらに進んだ経営理論となっている。これにより上で紹介したウォールストリート・ジャーナルの2008年調査「最も影響力のあるビジネス思想家」の20位にNONAKAの名前がランクインした。(6)における我々の考え方をさらに推し勧めたのが(7)。

※すべて雑誌掲載当時

(西川修一=構成 市来朋久・奥村 森=撮影)