小柄な女性に合う服が並ぶ“棚”をオンライン上で実現

ところで、メーカーのD2Cの取り組みが進むと何が嬉しいのか。ここで2つの事例を見てみよう。

1つ目は、COHINAというD2Cアパレルメーカーである。COHINAは、身長150cm前後の小柄な女性のためのブランドとして2018年からスタートした。大量生産大量消費でリアル店舗の流通が前提のこれまでのアパレル市場では、商品の生産・配下・陳列はどうしても大多数に向けた仕組みにせざるを得ない。そのためニッチなターゲットに属する消費者は、何かを妥協して商品を手にすることしかできなかった。

しかし、COHINAはオンラインでD2Cのビジネスモデルを行うことで、そういった悩みを抱えている消費者と直接つながり、オリジナルの商品を生産・提供した。消費者はリアル店舗では難しかった、自分に合う服がたくさん並んだ”棚”をオンライン上で手に入れることができたのだ。

ソファに座りながらスマホとカードを手に持つ女性。Eコマースのコンセプトイメージ
写真=iStock.com/Adrian Vidal
※写真はイメージです

コロナ禍でも顧客主義を維持し、EC売上高3倍

2つ目はアウトドア総合メーカーのスノーピークだ。スノーピークは直営店舗を中心とした販売や、リアルイベントを通じた顧客とコミュニケーションなど、オフラインから始まったメーカーだが、D2Cビジネスの理想形ともいわれている。

その理由は徹底した顧客中心主義の姿勢にある。顧客と直接つながり、顧客の声を拾い上げ、不満解消や隠れたニーズ応えるために業務改革に取り組み、商品開発へと反映していく。その結果、強いファンに支持されて顧客と世界観の共有ができており、大量生産の安価な商品を多くの人に買ってもらうことよりも、こだわりのある良質な商品を支持してくれる顧客のハートをがっちりつかんだのだ。

そんな彼らのデジタルの取り組みが強化されたのはコロナ禍からである。コロナ禍で9割以上の実店舗が休業し、オフラインで顧客との直接的な接点を失う大打撃を受けた。そこで、オンライン接客や動画で商品説明や使い方などを配信するなど、オンラインでもオフラインと変わらない顧客主義の姿勢を展開し、2020年のEC売上高を前年比3倍にまで伸ばしたという。