市政府が配給する食糧セットはバラバラ

日本でも動画が報道されて話題になったが、上海と同じくロックダウンがあった吉林省長春市では高齢の男性がスーパーの入り口の前で「野菜を売ってくれないか」と哀願しているのに、店内からは「売れないよ!」という非情な返事が返ってきたということがあった。ネットでしか購入できないスーパーで、その高齢者はネットでの注文の仕方が分からなかったからだ。

中国のSNS上でその動画が拡散されると、「かわいそうすぎて見ていられない!」「ネット弱者は飢え死にしろということか!」「市政府が何とかしろ!」という罵声が飛んだ。

このような問題も起きているため、上海市政府は3月31日以降、全市民に順次食料配給を行ったのだが、この中身についても不満が続出した。地域やマンション群によって配給される食料セットの内容に大きな差があったからだ。前述の男性が住むマンションでは牛乳と野菜、果物、鶏肉などが配布されたが、野菜と果物だけのマンションもあった。それでも「配布されないよりはましだ。深夜まで1軒1軒食料を配る係員に罪はない。感謝している」という人もいる。

いつどのタイミングで自宅が封鎖されるか分からない

だが、問題は、この先もロックダウンや、封鎖と解除が繰り返されるという問題がダラダラとしばらく続くのではないか、という不安があることだ。現に4月3日、上海市の感染者は約9000人に上り、封鎖が解除される見通しは立っていない。多くの上海市民はそのことを予測したり、覚悟したりしていたものの、いざ封鎖が延長されるとなると、やはり落胆の色は隠せない。

実は、今回のロックダウンより3週間ほど前の3月11日から、マンション群ごとのプチ・ロックダウンはすでに開始されていた。

中国では地方政府の末端組織である居民委員会というところがマンション群(社区と呼ばれる)を管理する仕組みになっている。1つのマンション群は数棟から数十棟まであり、ゲートで囲われている。3月11日以降、そのマンション群ごとに48時間、この居民委員会による封鎖が行われ、その間に2回のPCR検査を実施。陽性者が出なければそのマンションの封鎖は解除、という流れとなっていた。

私の中国人や日本人の知人たちも3月以降、全員がプチ・ロックダウンをすでに経験しており、そのたびに「やった! うちのマンションは今日解除されたよ」とか「うちはいったん解除され、喜び勇んで買い物に行って帰ってきたら、翌朝からまた封鎖になった。がっかりだ」という話をしていた。

解除されたときにすぐ買い出しにいかなければ、途端に食料不足に陥ることもあり、「まったく気が休まるときがない」「仕事のアポが全部キャンセルだ」という声が多数聞かれた。3月11日以降、ずっと封鎖されたままのマンション群もあるといい、社会生活に大きな支障をきたしている。