日本食に対する台湾人の印象とは
では、そもそも、台湾人は日本の作物や食べ物にどういったイメージや距離感を抱いていたのだろうか。ある50代の主婦はこう答える。
「日本の作物やフルーツなどはおいしいと評判で大人気ですよ。でも、日本と違うところをあえて言うと、私たちは、あまりブランドにこだわらないです。日本は、米や牛肉なんかに細かくブランドがあって、それによって値段が全然違うじゃないですか。台湾にもブランド牛とかはあるにはあるんですけど、そこまで人気がありません。誰も気にしないから。だから、普通の日本産という名前だけでみんなおいしいということで人気があります。でも、福島での原発事故以降、イメージは確かに落ちました。それは仕方のないことだと思います。でも、基準値をクリアしているなら、またお客さんは戻ると思います。台湾人は日本人を信頼してますから。だから今回の解禁の措置を私は嬉しく思います」
台湾人に安心して日本食を食べてもらえる努力の継続を
では、台湾にある日本食のレストランはどうだろう。近年、日本のチェーン店の台湾進出が勢いを増しているが、現地の利用者にはどんなイメージを持たれているのだろう。
台湾でも、日本食は人気で、日本でチェーン展開している吉野家ややよい軒など、日本では庶民的でリーズナブルな価格帯の店をよく見かける。だが、台湾の一般市民に取材したところ、それらは、意外と高級な店というイメージを持たれている。たまのご馳走で行く店という位置づけらしい。それは価格帯にも反映されていて、やよい軒などはだいたいどのメニューも300台湾元(約1200円)するそうだ。
日本で牛丼が500円前後で販売されていることを考えると、これを日本に当てはめると、「毎日通うには少し高い」といった感じだろうか。
だが、これはチェーン店企業の戦略で、高級路線をあえて狙っているともとれる。しかし、これも福島の原発事故以降、イメージは確実に低下した。原発事故後に筆者も何度も台湾を訪れているが、イメージ悪化などで、顧客も離れていったように見えた。素材に日本産のものを使っていなくても、なんとなく客足は遠のくものである。
今回の措置で、客足が戻るといいのだが……。
結論としては、台湾の人が輸入解禁してくれて、無邪気に喜んでいないで、日本は、国としての信頼回復に一刻も早く努めるべきだろう。例えば、台湾の人を福島の農家に招待する無料ツアーを定期的に企画するなど、どうやったら安心して食べてもらえるか、常に考え続けることが重要だ。それが、本当に台湾人がおいしく、安心して日本の農作物を食べてくれることに一歩一歩近づくことになり、ひいては国家間の信頼関係の回復にも影響を与えるのだ。