産後うつ、育児ノイローゼの防止に保育所は役立つ

父親側も育児をしたいと思うでしょうが、何しろ日本では長時間労働が当たり前で、パートタイムではない常用労働者の平均労働時間は世界一です(内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和2年版」)。法律では週に40時間以上働かせてはいけないということになっていますが、時間外労働をする男性の割合がとても多いのです。それに呼応して女性の家事労働時間は世界的に見ても長く、男女ともに日本人の睡眠時間は世界で最短。

つまり男性は外で長時間働き、女性は育児と家事を長時間担うことが多いわけです。だからこそ産後うつのリスクが高くなります。こういったワンオペによる産後うつ、育児ノイローゼなどのリスク回避にも、保育所やこども園などが役に立つのです。

【図表2】男女別に見た生活時間(週全体平均)(1日当たり、国際比較)
内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和2年版」より

「0歳児を預けるなんて大丈夫なの?」「愛情不足にならないの?」

このようにさまざまな事情や背景があって子供を預けて働くのにもかかわらず、「こんな小さな0歳児を預けるなんて大丈夫なの?」「愛情不足にならないの?」などと、祖父母や周囲の人から否定的なことを言われたりすると、保護者のみなさんはとても嫌な気持ちになったり、本当に預けていいのかと不安を感じたり、子供に悪いのではないかと罪悪感を持ったりしてしまいがちです。

今は周囲だけでなく、SNSなどを通じて「0歳で保育所に預けるなんて親失格」「子供は3歳まで家で育てるべき」などといった極端な批判を目にしてしまうこともあります。でも、それぞれにさまざまな事情や背景があるのですから、子供をどう育てるべきかについては、手伝いもできず事情も知らない他人が、口を挟む余地はないでしょう。

両親と過ごす時間が少ないと、子供の情緒や対人関係に支障をきたす「愛着障害」になるという考えは、さまざまな研究によって否定されています。一例を挙げると、アメリカの国立小児保健・人間発達研究所が1300人を対象に5年間追跡調査をした結果や、お茶の水女子大学の菅原ますみ教授が日本の269組の母子を12年間追跡調査した結果でも、3歳未満のうちに母親が働いた場合、子供の問題行動や、母子関係の良好さ、子供への愛情への悪影響は認められなかったというものがあります。子供にとって保護者と保育所の先生とははっきり違います。保育所に行っている以外の時間に、スキンシップをとったり遊んだりすることで愛着は育つのです。