病院にいながら起業し、次世代型内視鏡を開発

藤井は現場の反応が気がかりだったという。

「紙なんてって言われないだろうか、あるいはこんなものをつけるのは恥ずかしいと言われないだろうか。他の製品と比較されて駄目だと言われないだろうかって(不安で)押しつぶされそうでした」

寺岡のいる武蔵野赤十字病院には300個を3箱送った。すると――。

「ありがとう。こんな風に使っているという写真がいっぱい来ました。みんなでその写真を見ながら、いい仕事したなぁって言っていました」

初回出荷分の2万個は鳥取県に寄付、鳥取県は1万個を東京都に回した。小池百合子都知事が受け取ったというニュースが全国中に流れた。

メディビートの山岸はその反響を今もよく覚えている。

「うちはベンチャーで小さくて人もいないんです。あのときは一日電話が鳴り止まない状態でした」

ORIGAMIは医療現場への貢献のほか藤井に経験という大きな糧を残した。2020年6月、藤井はとりだい病院に籍を置きながら「アールゼロ」という企業を立ち上げ、次世代型内視鏡の開発を始めた。

そして2021年4月に鳥取大学大学院工学研究科博士後期課程に入学。医学と工学の両立、そしてイノベーション――藤井は子どもの頃、やりたかった道を邁進している。

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