「ガラパゴス」化した日本の携帯電話業界
マイクロソフト、グーグル、アマゾン、ヒルトン、スターバックス……。これらは日本で活躍するアメリカのIT・ホテル・飲食のサービス業です。一方、アメリカで活躍する日本企業といえば、自動車や電機メーカーの存在は際立つものの、サービス業はすぐに思い浮かびません。
職人的な製造技術に関しては世界トップ級でも、飲食やレジャー、インターネットといったサービスの分野では世界に後れをとっている感は否めません。
原因のひとつは、日本に根付く「過剰品質」のカルチャーにあります。ハーバード大学教授のクレイトン・クリステンセン氏は、著書『イノベーションへの解』の中でその概念を指摘しています。
過剰品質とは、メーカーが他社との競争を繰り返す中で、より多くの高い技術を持つ機能を付加し、差別化しようと突き詰めていくうちに、消費者のニーズから乖離してしまうような現象をいいます。
日本の携帯電話メーカーは過剰品質に陥っている顕著な例といえるでしょう。日本の携帯電話に関する技術は、世界で最高水準であるといわれてきました。90年代後半から、携帯電話メーカーは続々と海外進出を果たしますが、いずれも成功していません。世界ではもっと低スペックのものが普通で、消費者も日本ほど高性能なものを必要としなかった。結果、一部の消費者が過剰な品質を強く求める日本特有の傾向も相まって、国内の携帯電話市場は「ガラパゴス化」してしまったのです。
このような状況では、企業としての収益性が低下するのは避けられません。新しい技術を投入したとしても、多くの消費者のニーズとかけ離れてしまっては収益を上げられず、当然のことながら競争力を失います。