なぜ日本では女性管理職がなかなか増えないのか。ある調査では、子供のいる若年夫婦のうち、男性の4割は「お互いキャリアアップを目指していく」と答えているが、女性の5割は「配偶者のキャリアを優先していく」と答えている。男女のキャリア観に決定的な差があるのだ。ジャーナリストの浜田敬子さんがその背景をリポートする――。
背中合わせで椅子に座る男女のシルエット
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主要企業の半数以上が「早期の達成は難しい」

女性管理職がなかなか増えない実態について、先日興味深い調査結果が続けて発表された。

その一つが1月末に報道されたNHKの国内主要100社に対するアンケートだ。2020年代の早期に管理職や役員における女性の割合を30%程度にできるかどうか尋ねたところ、100社中53社が「早期の達成は難しい」と回答(ちなみに「すでに達成」が4社、「早期達成可能」は9社)。中には「必ずしも達成は必要と考えていない」とした企業も6社あった。

政府は第2次安倍政権前から「2020年までには指導的立場の女性を30%に」、通称「202030(ニーマル・ニーマル・サンマル)」という目標を掲げてきたが、企業内で女性の管理職登用はなかなか進まず、2020年度時点で、課長職に占める女性の割合は10.8%、係長職では18.7%にとどまっている(雇用均等基本調査)。

女性活躍推進法が成立した2015年度はそれぞれ8.4%と14.7%だったので、増えているといえば増えてはいるが、取り組みが加速しているとは言い難い。結果として、政府は2020年末には「202030」目標の達成をあっさり諦め、「2020年代の可能な限り早い時期に達成」と修正した。その修正した目標ですら「達成困難」という企業が半数に上るということなのだ。

女性管理職登用について数値目標を設定するかどうかについては、ダイバーシティ経営を掲げている企業の中でも「数値目標は必要ない」と考える企業もあるし、「数値ありきでは実力のない女性まで登用することになり、逆差別だ」という主張もまだまだ根強い。

管理職になりたくない女性と男性の明らかな差

そしてこの数値目標が達成困難な理由として必ず挙がるのが、「女性が管理職になりたがらない」というもの。実際NHK調査でも、達成できない理由として「管理職を目指す女性が少ない」という記述が見受けられた。

独立行政法人国立女性教育会館の調査によると、企業で働く正社員の女性の中で、管理職を「目指したいと思っている」のは1割強、「どちらかというと目指したくない」「目指したくない」という人は5割にも上る(「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」)。

それでも入社当時は「なりたくない」のは3割強。それが入社して年数が経つほどに「なりたくない」率は増加していき、5年目で5割を超える。男性も入社当初から管理職になりたくない割合は徐々に増えるのだが、それでも同じ5年目では約2割だ。

この差はどうして生まれるのだろうか。女性たちはなぜ管理職になりたがらないのだろうか。