パワースポットを撮って待ち受けにする“実践”

そして、同じような技術による感覚の変化は呪術にも生じる。そのわかりやすい例の1つは、やはり同じく写真に関するものだ。

現代のパワースポット・ブームの先駆けになったのは、明治神宮にある清正井きよまさのいどである。明治神宮の御苑にある湧水で、2009年末、テレビのバラエティ番組で良い気が集まる開運に効く場所として紹介されたのをきっかけに、多い時には数時間待ちの行列ができるようになった(ブームについて詳しくは拙著『宗教と日本人 葬式仏教からスピリチュアル文化まで』を参照してほしい)。

こうして集まった人々が行ったのが接触呪術である。現在は禁止だが、清正井の水で手やお金やストラップを洗った。水と物理的に接触させることで、清正井に宿るとされる気やエネルギーを持ち帰ろうとしたのだ。そして、これら水洗いと並んで多く見られたのが、井戸の写真を撮り、その画像をスマホの待ち受けにするという実践である。

明治神宮御にある清正井
筆者撮影
明治神宮御苑にある清正井

非接触型の接触呪術が広がっていった

写真撮影は、厳密には対象との接触を伴わない。だが、ケータイやスマホが日常生活に不可欠となり、体の一部のように感じる人々さえいる状況では、対象の写真を撮り、それを常に最初に目にする待ち受け画面に設定することは、呪術発動に十分な接触と観念されるのだろう。

その後、この非接触型の接触呪術とでも呼べる実践は、訪れた神社のご神木を待ち受け画面にするといった形で広がってゆき、今では「開運待ち受け画像」といった紹介記事も各種メディアに掲載される。歌手の美輪明宏さんを待ち受けにすると運気が上がるといったことも言われ、ゴールデンボンバーの「また君に番号を聞けなかった」で歌われたことを覚えている人もいるかもしれない。