NFTで“唯一無二性”を取り戻そうとする御朱印

こうした呪術的思考の現代的展開は、ほかにも見られる。スマホ関連で言えば、ロックを解除する暗証番号である。この数字を数秘術的に良いものにすることで、運気を上げるといったものである。また、御朱印の画像データを管理するスマホ・アプリの御朱印帳などもある。

そして御朱印と言えば、しばしばその転売が問題となるが、現在では、コロナ禍の移動制限や接触回避もあって、郵送で頒布する寺社も珍しくない。さらに面白いのが「御朱印NFT」である。

NFT(Non-Fungible Token)とは、仮想通貨を支える技術で、最近ではNFTアートの高額取引が話題になることが多い。デジタルで制作された画像作品は、簡単にコピーすることができる。だが、NFTはオリジナルのデータが唯一無二であることを裏書きし、コピーや偽造との違いを保証するのである。

この技術を応用したのが御朱印NFTである。これをいち早く導入した神奈川県横須賀市・浄楽寺のウェブサイトでは、近年、御朱印は「オンラインであればだれでもダウンロードできる『画像』」になってしまっているが、NFTによって、「自分がいただいた」という神仏との「つながり」をあらためて実感させてくれる技術として解説されている。

御朱印は、基本的には各寺社で同じようなデザインのものが頒布される。だからこそ上述のような転売が起きてしまうし、神仏の祀られる場所に行くという物理的な手続きを踏まずにいただくことに違和感を覚える人も多い。だがNFTによって、一つひとつの御朱印に唯一無二性が与えられることで、転売問題や呪術的違和感もある程度解消されるのかもしれない。

新しい技術には新しい呪術が生まれる

最後にデジタル技術と宗教の関わりについて一例だけ挙げておくと、日本発祥の仮想通貨モナコインをめぐっては神社が建立されている。2013年に誕生したモナコインは、巨大ネット掲示板2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)でアイデアが生まれ、現在では動画配信の投げ銭などでも使われるように、強いコミュニティ意識に支えられているのが特徴だ。そうした意識を反映するように、有志がモナコインで取得した長野県の山中にモナコイン神社を建立し、オフ会なども行われているという。さらに、「北海道千歳モナ神社」を建立しようという動きもあるようだ。

新しい技術は、伝統的な呪術や宗教実践を排斥するだけではない。むしろ、新技術がもたらす感覚変容によって、それまでになかった呪術が生み出されもする。お賽銭のキャッシュレス化も、そうした新呪術の展開と根底ではつながる現象だと思われる。

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