「想定外」のライフハックもあるっちゃある
実は、案外有効だと思うアイデアもいくつかあった。自己嫌悪で落ち込む長女に対して、父がかけた言葉は「貝、買いなさい」である。
「仕事の合間にでも自分のために貝、買いなさい。1日、その貝と一緒にいて、仕事が終わったらその命に感謝して、食べなさい。分量は悩みの大きさに合わせるべき。悩みが大きいならたくさん買ってたくさん食べなさい」
仕事中に貝、鞄の中に貝。気になって仕方がないし、早く帰りたいと思うだろう。
でも、どうでもいいタスクがあると見えてくるモノがある。取捨選択や決断が迅速になる。
長女は結局アワビを買って食べた。そんなシーンがあって、一理あるなと思ってしまった。悩みを貝にたとえ、大切に持ち運び、最後はおいしく食べて殻を捨てる。悩みも捨てる。いやこれ、心理療法として使えるんじゃなかろうか。
他にも「働く意義がわかっていない新人は働き者が営む店へ連れていく」「誘いを断るときは『朝から決めていたことがある』」「白紙のビンゴカードの空欄にありきたりな文言を書いておく。会議中に出た文言をチェックし、ビンゴがそろったらその会議は無意味」など。
ライフハックというほどではないかもしれないが、日常の憂さとモヤモヤを晴らすアイデアが豊富。他のドラマにはない要素でもある。
恋と仕事と家族と食。そこから生まれる意外な人生訓。
非日常や絵空事を仰々しく勇ましく、あるいは綺麗事しか描かないドラマが多いけれど、情けないやら恥ずかしいやら、でもいとおしい日常の積み重ねを描く作品も必要。
「ふりむけばそこにある」ドラマの醍醐味を再確認したのが「おいハンサム‼」である。