※本稿は、冨山和彦、木村尚敬『シン・君主論 202X年、リーダーのための教科書』(日経BP)の一部を再編集したものです。
どうやって問題を早期発見するか
――『君主論』第3章より
イタリア半島の小さな都市国家から始まった古代ローマは、次々と領土を拡大し、やがて地中海世界の全域を支配する大帝国を築いた。
これだけの繁栄を築けたのは、ローマ人が獲得した領土に植民を送ったからである。新たな支配者は自分に忠実な人々を植民として派遣し、その地域に残っている強大な勢力を弱体化させ、自身の支配体制を完全なものにした。
もしこれらの方策を実行しなければ、いつかまた地元勢力が力をつけて反旗を翻したり、国内の混乱に乗じて外国勢力を引き入れたりするかもしれない。
将来の紛争を予見し、早い段階で対策を施すことでそれを回避する。これがマキャベリの言う「すべての賢明な支配者のなすべき事柄」である。
どんな病も、早期に発見して治療を施せば、回復の可能性も高まる。いよいよ末期という段階になって薬を与えても、時すでに遅しである。
だが問題は、病の初期にそれを見つけるのは難しいことだ。国の統治も同様で、将来の災いをはるか以前から知ることができれば、ただちに対処して未然に防ぐことができるが、それは決して容易でない。
だからこそ君主は、先を見通す目と早期に方策を施す実行力が必要なのである。