2月14日、バレンタインデーといえばチョコレート。「世界初の完全食」と銘打たれたチョコがネットや百貨店などで話題を呼んでいる。企画・開発・製造したのは北海道大学医学部5年生・中村恒星さん。なぜ医学生がチョコビジネスを始めることになったのか。「プレジデントFamily」編集部の取材に答えた――。

※本稿は、『プレジデントFamilyムック 医学部進学大百科 2022完全保存版』の一部を再編集したものです。

中村恒星さん。北海道大学医学部のキャンパスにて
撮影=高津尋夫
中村恒星さん。北海道大学医学部のキャンパスにて

1枚で900円以上の高価なチョコが発売初日に2時間で完売

「世界初」と銘打った新作のチョコレート「andew(アンジュ)」が発売されたのは2020年5月のこと。タブレット1枚で900円以上と高価であるにもかかわらず、発売初日に2時間で200枚を完売し、話題を呼んだ。

注目されたポイントは二つ。一つは、「世界初の完全食チョコレート」であること。カカオに加え、チアシードなど7種の食材を使用し、タンパク質やビタミン、ミネラルなど人間に必要な27種類以上の栄養素を全て含む。しかも白砂糖・乳化剤・香料などを一切使用しない。なのに、おいしい。

二つ目は、企画・開発・製造したのが、チョコ作りと縁のない素人である、北海道大学医学部4年生(当時)の中村恒星さんだったことだ。

中村さんは、岐阜県出身。富山大学薬学部を卒業後、難関試験を突破して北大医学部2年生に編入した。

「小さい頃に、エイズに感染した人のドキュメンタリー番組を見て、新薬を作って彼らを助けたいと、薬学部に行きました。その後、病気に苦しむ人により深く関わる医学にも興味を持ったんです」

チョコ開発に着手したのは、編入1年目の冬だった。

「きっかけは、札幌市内で先天性の皮膚病・表皮水疱すいほう症の患者さんと出会ったことでした。口の中がひどく荒れることも多く、栄養補給は液状のものに限られてしまう。治療法もない。そんな患者さんが少しでも笑顔になれるような食べ物を作れないかと思ったのです」

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