小松菜がどのスーパーでも1袋100円前後である理由

そもそも、日本の農産物が1袋100円くらいで販売されている理由は何でしょうか? 例えば小松菜。1袋100円ぐらいで販売されている安値安定野菜の代表格です。台風が来たり、天候不順などの理由で相場が急騰しない限り、大体このくらいの値段です。皆さんは、この小松菜の価格の理由を説明できるでしょうか?

と、聞いておいて怒られそうですが、このことに明確な理由はありません。強いて挙げれば、「みんなが100円ぐらいだと思っているから」です。

まず生産者が、大体そのくらいが適正な値段だと思っています。スーパーのバイヤーも、大体そのくらいの売価が適正だと思っている。最後に消費者も、このくらいの値段が妥当だと思っている。要するに、どの立場の人もみな、100円ぐらいが普通だと思っているのです。

こうして、小松菜の値段は1袋100円ぐらいだという相場観が成立します。最初にその相場観を作ったのは誰なのか、それは分かりませんが、相場観はそんなことはお構いなしに維持・更新され続けています。

「結局何にも分からないじゃないか」と言われそうですが、私が言いたいのは「野菜の価格の決まり方なんて所詮はその程度でしかない」ということなのです。小松菜を1袋1000円で販売しようという試みを、寡聞にして私は知りません。

「アホか。単なる野菜でしかない小松菜が1袋1000円で売れるわけがないだろ!」とお思いになるでしょうか? でも、「1袋1000円の小松菜」のような商品が、他の野菜では存在しているのです。

フランス産アスパラが1キロ5000円もするのは「フランス産」だから

一方、「単なる野菜」であるはずのフランス産ホワイトアスパラガスは、1キロ5000円以上の値段で販売されています。ホワイトアスパラガスの瓶詰めは比較的有名ですが、瓶詰めではありません。生のホワイトアスパラガスを空輸しているのです。

ホワイトアスパラガス
※写真はイメージです(写真=iStock.com/anouchka)

噓だと思われた方は「フランス産 ホワイトアスパラガス」という検索ワードでGoogle検索してみてください。1キロ5000円どころか6000円以上の商品も普通に売っています。

どうしてフランス産アスパラガスは、「単なる野菜」であるにもかかわらず、こんなに高価でも売れるのでしょうか?

農業の事情に詳しくない方は、「日本では作れないからだろう」と思うかもしれませんが、ホワイトアスパラガスは国内でも栽培できます。ホワイトアスパラガスは、一般的な緑色のアスパラと品種が異なるのではありません。日光を遮断することで光合成を阻害し、緑化しないように栽培しているだけです。春先に出回る白いウドと全く同じ原理であり、栽培方法としてはそれほど特殊な技術ではありません。私の友人にも、ホワイトアスパラガス農家をしている人がいます。

では、どうして日本人は国内調達できるホワイトアスパラガスを、わざわざフランスから航空燃料を使用してまで輸入しているのか。どうしてこんな値段でも売れるのか。一般のスーパーに出回ることは滅多にありませんが、国内産は高くてもこの4分の1程度の価格が普通なのです。近年は高価なホワイトアスパラガスも少しずつ増えてきましたが、まだまだ試験的な試みであるという印象です。

すぐに考え得る理由は、「日本産よりも美味しいから」でしょうか。しかし、日本産農産物の美味しさや品質の高さは、衆目の一致するところです。ホワイトアスパラガスに限って、味がフランス産に著しく劣るとは考えられません。しかもアスパラは品質劣化が比較的早い品目なので、鮮度の良さが美味しさを決める大きな要因でもあります。

わざわざフランスから輸入しているホワイトアスパラガスの鮮度が、日本産の鮮度を上回ることは基本的にはないはずです。ですから、日本産とフランス産で、その価格差に値するような「美味しさの違い」があるとは思えません。

実は、この価格差の理由はそんなに難しいことではないのです。理由は「フランス産であること」ただそれだけ。フランス産であるからこそ、1キロ5000円ホワイトアスパラガスという商品は成り立つのです。