「池ポチャ」してしまう理由とは

怒りを鎮めるコツをつかんだら、次にすべきは「責めるのではなくビジョンを示す」こと。叱ることの本来の目的は、部下の能力を引き出し、パフォーマンスを上げて業績に結びつけるためだ。しかしミスをとがめるだけでは、部下は萎縮する一方でパフォーマンスの向上は望めない。

「『絶対にミスするな』などと禁止の命令文を繰り返しても、教育効果はありません。ゴルフだって『池ポチャしちゃいけない』と思えば思うほど、ボールが池に吸い込まれる映像が頭に浮かぶでしょう? するとそれに行動が引っ張られて、必ずといっていいほど池ポチャしてしまう。そうならないためには、『○○の方向に向かってまっすぐ打てばワンオンだ』という、あるべきビジョンを思い浮かべることが大事なんです。叱るなら然るべきビジョンを示せ、ですよ」

その然るべきビジョンを部下が持てるようにサポートするのが上司の役目。大げさに考えずとも、「伝票が間違っていたぞ。何やってるんだ」という言い方を「単価と個数、合計金額、日付、この4カ所を必ずダブルチェックして」と、具体的な指示に置き換えるところから始めればいい。

また、そこから一歩前進する方法として本間氏は「部下へのヒーローインタビュー」を勧める。人は誰しも上に立つと、自分の武勇伝を語りたがるが、その気持ちをぐっと抑えて部下の武勇伝に耳を傾けるのだ。

「仕事にやりがいを感じた瞬間や、うまくいった体験を部下に話してもらうんです。これは実際に企業の部課長の方に勧めていますが、一度やってみると部下のやる気が違ってくる。職場が元気になるのが実感できるはず」

言葉のかけ方一つで、職場は確実に変化する。「ダメな奴だな」「使えない部下だ」という意識がにじむ言葉を使い続けると、職場の活気は失われる一方だ。しかしひとたび「まだまだ可能性はある」「こうすればうまくいく」と言われれば、人の視線はおのずと上向きになる。

「言葉はもっとも身近な洗脳装置。どうせ洗脳するなら、能力を伸ばす言葉をかけてあげましょう。『縁あってこの会社に来たのだから、一緒にいい会社にしていこう』とかね」